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今回は、アプリ開発エンジニアとして総合エンジニアリング企業に入社した卒業生に、Neuro Diveの学習プログラムや成果物制作、就職などについて語っていただきました。開発者視点にとらわれずユーザー視点をもつことで、プロダクトの利便性向上を追求しているそうです。

就職者

障害を超え、輝く未来へ―Neuro Diveが拓くITエンジニアの夢路

林みのりさん(30代)

  • Neuro Dive横浜の利用期間:2年
  • 就職先
    総合エンジニアリング企業
  • 前職
    テレフォンオペレーター、日本語教師

障害と折り合いながらエンジニアの道へ

高校時代、大学の研究や将来の仕事に目標をもてなかった私は、大きな動機もなく青山学院大学経済学部現代経済デザイン学科に進学しました。経済学概論には興味をもてませんでしたが、国際政治経済学部の授業を選択したところEUなどの世界経済に関心が芽生え、海外に目を向けるようになったのです。

海外就職にも興味が湧いていたので、思い切って1年間休学して3カ月間フィリピンに語学留学しました。帰国後、アプリ開発事業を手がける国内のベンチャー企業で実習を経験。飛び込み営業の仕事でしたがアプリのテストやエンジニアとのやり取りを行ううちに、アプリ開発やプログラミングに興味をもつようになったのです。IT業界での海外就職も視野に、ベトナムのハノイにあるIT企業の実習に応募し、営業職のかたわらプログラミングを学びました。日本では文系出身エンジニアも数多く活躍しているので、ITエンジニアを目指すことにしたのです。帰国後、エンジニアの求人に応募し、無事内定を獲得しました。

その矢先、体調を崩してしまい、医療機関を受診したところうつ病と診断されました。発症のきっかけは、地元の交友関係における対人ストレスです。やむなく内定を辞退し、テレフォンオペレーターや日本語教師のアルバイトをしながら治療を続けました。治療中、障害を開示したことで退職を勧告されたり、身体に与える影響を心配して投薬治療を中断してしまったり、さまざまな出来事によって統合失調症を発症しましたが、約5年間の治療を経て寛解を迎えたのです。再びIT業界を目指すべく、就職活動を開始しました。

ITアドバイザーの指導に魅力を感じ、就労移行支援事業所Neuro Diveへ

障害の開示によって退職を勧告された経験がトラウマになっていたので、障害を伏せないオープン就労を目指すことに。IT業界を志しインターネットで情報収集したところ、Neuro Diveの存在を知りました。

それまで就労移行支援制度や障害者雇用の知識はありませんでしたが、国の援助を受けながらITスキルを習得できると知り、日本の福祉制度に感動を覚えました。Neuro Dive以外の就労移行支援事業所も検討しましたが、高度なプログラミング講座やITアドバイザーの指導、質の高いカリキュラムに惹かれ、Neuro Diveを選択。有料の学習サービス「Udemy」を無料で受講し、自己学習を進められる点も魅力でした。

AI分野を究めようとする利用者が多い中、私は独立独歩でアプリ開発の学習を進めました。習得したツールは、Ruby on RailsやHTML、CSS、JavaScriptなど。知識やスキルを磨く一方、ITアドバイザーからエンジニアの資質について学び、「エンドユーザーのニーズに合致したプロダクトをつくってこそエンジニアの存在意義がある」という教訓を得ました。その教訓は、AIだろうとアプリ開発だろうと変わりはありません。ユーザーの利便性を第一に考えたアプリを開発しようと、決意を新たにしました。

アプリ開発の第一歩を踏み出す

Neuro Diveでは実践力を養うために成果物を制作します。そのテーマを検討していた私は、障害で苦しんでいた時、カラーコンサルタントの資格をもつ姉のセラピーによって心が軽くなった経験を思い出しました。カラーコンサルティングの良さを多くの人に知ってほしいと、「カラーコンサルタントと悩みを抱えている人のマッチングアプリ」というテーマを設定。いよいよ自分の手でアプリを開発する日がやってきました。

使いやすいアプリを開発するには、ER図の作成が不可欠です。ER図によってデータ構造を俯瞰し工程を明確にしなければ、設計が根底から崩れかねません。ITアドバイザーの指導を仰ぎながら、ER図の作成を進めました。

制作の後半段階では、開発環境から本番環境への移行に苦戦しましたが、Neuro Diveに加えメンタリングサービスの支援も受けながら課題を克服しました。誰かの心を癒せるアプリを目指し、甥と姪の手描きイラストも取り入れながら、温かみのあるプロダクトをつくりあげていったのです。

支援員の言葉に支えられ、企業実習に参加

Neuro Diveでは、スキルや実践力とともに、職業準備性を身につけます。「Will Can Must」のフレームワークを紹介する講座で、企業が知りたがっているのは求職者の「Will」より「Can」だと学びました。成果物制作を振り返りながら自己分析した結果、私の「Can」はユーザー視点に立って利便性を重視した開発ができる点ではないかと思ったのです。活用シーンを想定したUIデザインや、遊び心のあるカスタマイズなど、ユーザーを楽しませる設計力も自分の強みだと気づきました。これから就職活動に臨む方も、ポジティブな気持ちで自分の得意分野を検証していただければと思います。

自分の強みをアピールするスキルも大切です。私は、物事をかみ砕いてわかりやすく伝えることは得意ですが、人前で話すことが苦手でした。しかし、Neuro Diveで発表の場数を踏むうち、大勢が集うオンライン上でも抵抗感なく話せるようになったのです。

ただ、言葉遣いについて指摘を受けることが多かったので、支援員と面接練習に取り組みました。参考になったのは、敬語の使い方だけでなく、質問の意図を理解して端的に答える術や、自分を飾らない率直なコミュニケーション法など。支援員から客観的かつ的確な助言をもらえる面接練習や、エントリーシートの添削は、心強いサポートでした。

それでも企業実習に参加するようになると、焦りから落ち込んでしまうことも少なくありませんでした。そのような時、支援員の言葉が心の支えになりました。「泣いても笑っても時間は過ぎていきますよ」「今、努力していれば“あの時頑張ってよかった”と思う日が必ずやってきます」と励ましてくれたのです。「一緒に頑張りましょう」と寄り添ってくれたので、挫けず前を向くことができました。

業務効率化を目指し、アプリとAIを掛け合わせたシステム開発に着手

就職先は総合エンジニアリング企業に決まりました。Neuro Diveで行った成果物発表会に、社長と副社長が来訪してくれたのです。発表会当日、プレゼンテーション予定のアプリにログインできないトラブルが発生しましたが、社長が快く順番を後回しにしてくれて、懐の大きさを感じました。社長も副社長もまだ30代ですが、思考の柔軟性や先進性、コミュニケーション能力は比類ないものです。フルリモートの勤務形態も魅力ですが、何より尊敬するトップの下ではたらけることに喜びを感じています。

1人1プロジェクトなので上流から下流まで携わるのは大変ですが、だからといってプレッシャーをかけられることもなく、人間関係の軋轢を生む心配もありません。今は、AzureのAI Searchを活用し、資料検索アプリを実装するプロジェクトに取り組んでいます。従来、会社ではIBM Notesを活用した資料検索システムが導入されていました。AIとアプリを掛け合わせたシステムを構築できれば、検索ワードと合致する情報だけでなく、関連性の高い情報や検索率の高い情報を短時間で抽出してくれるでしょう。まだ実現可能か検証段階ですが、実装フェーズに携われるとしたらタグ付けやデザインにこだわって、使い勝手のいいシステムを構築したいと思います。

C#やAzureは入社してから学びましたが、CRUDやGitはNeuro Diveで習得した知識が役立っています。Azureなどのクラウドも日々進化しているので、常にアンテナを張り、社内で情報共有しなければなりません。グループディスカッションで身につけた役割分担や、職業準備性講座で学んだ「結論ファースト」など、コミュニケーションスキルを磨いたおかげで職場でも良い関係性を築けています。

ITスキルと職業準備性のバランスが大切

クラウドサービス市場ではAzureを凌駕してAWSがトップシェアを占めていますが、それゆえAzureエンジニアは希少な存在なので、Azureスキルを強化し自分の市場価値を高めたいと考えています。将来の目標は、「この領域は林さんに任せよう」と言ってもらえるような、絶対的な武器を手に入れること。それがAzureになるか、フロントエンドになるか、今はまだわかりません。学生時代から抱いている海外への興味を伸展し、海外で活躍するエンジニアを目指す道もあるでしょう。仕事に取り組みながら、自分の可能性を開拓したいと思います。

ITスキルも大切ですが、企業が障害者人材に何より求めているのは職業準備性ではないでしょうか。これからNeuro Diveを利用する方には、ITスキルと職業準備性のどちらかに偏ることなく、バランスよく身につけることをおすすめします。面接では、障害特性への対処法について掘り下げられることがあるので、自己分析と自己表現ができるよう備えが必要です。また自走力を重視しているNeuro Diveでは、受動的な学びより能動的な学びの方が得るものは大きいと思います。自ら考え主体的にカリキュラムを進めながら、有意義な時間を過ごしてください。