Neuro Diveでは、AIやデータサイエンスの分野で活躍する人材を育成し、長期就労をサポートしています。
今回は、業務自動化の担い手として大手企業に就職した卒業生に話を伺いました。Neuro Diveの実習で仕事の流れを経験し、自身の課題やコミュニケーションの重要性に気づけたと語るOさん。Neuro Diveでの日々を振り返り、学習プログラムや成果物制作、就職活動について語っていただきました。
Neuro Diveで学んだ先端ITスキルと業務フローが仕事の2本柱に
O.Tさん(20代)
- Neuro Dive 秋葉原の利用期間:1年1ヵ月
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前職
検査職 -
就職先
情報通信関連企業
生物分子科学の研究に専心した院生時代
子どもの頃、広汎性発達障害が明らかになりましたが、小学生時代は障害をあまり意識することなく過ごしていました。しかし、中学、高校と学校段階が上がるにつれて、マルチタスクへの課題感やケアレスミスの多さなど、障害特性を自覚する場面が増えていったように思います。学業に支障が出ることもありましたが、得意分野を活かして理学部のある大学への進学を叶えました。
卒業後は大学院に進み、タンパク質の結晶構造解析を研究。具体的にはタンパク質の結晶を生成し、放射線を照射して得られたデータを基に、立体構造を観測するといった内容です。上質な結晶を生成するには、使用する薬品の種類や濃度、温度など複数の条件を変更し、実験を繰り返す必要がありました。大学院での研究活動は、まさに地道な作業の積み重ねで、創造的なトライアルアンドエラーの礎となっています。
興味関心のあったIT分野に進むべく就労移行支援の利用を決意
課程修了後、専門性を活かして検査職に就きましたが、転勤を契機にはたらきづらさを感じるようになりました。住み慣れた故郷を離れたさびしさに加え、生活環境や職場環境の変化がストレスにつながっていたのです。新しい環境に適応することが難しく、次第に転職を意識するようになりました。転職情報を収集する中で、母が勧めてくれたのがNeuro Diveです。
ITは私にとって興味深い分野の一つで、中学生の頃に独学でC言語を学んだり、大学生になるとゲームエンジンで簡単なゲームを制作したり、何度か接点をもっていました。プログラミングは、成功であれ失敗であれ即座に結果が返ってくる点や、たとえ小規模でもモノを作り出せる点に魅力を感じています。さほど集中力が高くない私でも、ITは没頭できる分野だったのです。
Neuro Diveの説明会に参加したところ、先端ITだけでなく一般的なビジネススキルも習得できると知り、利用したいという思いが強くなりました。前職でも、マルチタスクに苦手意識を感じることがあったので、対処方法を身につけたいと考えていたのです。3日間の無料体験でPythonを使ったデータ分析に取り組み、通所の意思を固めると、即座に退職と就労移行支援利用の手続きを進めました。
Neuro Diveの実習で、仕事やキャリアのイメージを具体化
Neuro Diveの利用期間は1年1カ月間です。利用開始後、Pythonによるデータ分析で初めての成果物を完成させ、Excel VBAやGoogle Apps Scriptなどの専門スキルを学習。並行して、さまざまな職業準備性講座でビジネススキルを学びました。ストレスの対処方法や障害特性への理解を深めるとともに、必要な配慮事項を分析することで、障害への向き合い方が変わっていったのを覚えています。また「Will・Can・Must」のフレームワークに沿って、自分の「やりたいこと・できること・すべきこと」を言語化し、自分のあり方を見つめ直す講座も印象的でした。
IT領域ではたらくことを想定した擬似就労では、「特定のフォーマットに沿ったCSVファイルの自動転記」という支援員からの課題を、Excel VBAを使って形にしました。私がめざしたのは、使う側の作業を簡略化し、ワンクリックで全工程を完了できるようなツールです。
要件の把握が不十分なまま作業を進めたため手戻りが発生したこともありましたが、支援員との振り返りの中で課題点や改善策を見出だせたことは、貴重な経験でした。それ以降、時間を要する機能の実装に着手する際は、必ず依頼者側に要件を確認するようになりました。再び社会に出る前に仕事の流れを経験し、手戻りのリスクを回避する術を学べたことは大きな収穫です。
実習終了時は、「プロジェクト完了のスピード」や「ツールのスムーズな操作性能」に対し、ITアドバイザーから高評価をいただいた記憶があります。この実習を機に作業自動化への情熱が芽生え、将来のキャリアに対するイメージも徐々に固まっていきました。
企業実習でステップアップを図り、内定を獲得
その後、選考を兼ねた企業実習への応募を開始します。約1カ月間にわたる実習で、Pythonを使ったWebスクレイピングや、Excel VBAによるデータ整形に取り組みました。要件定義からスタートして、設計、テスト、軌道修正という開発プロセスを体験でき、学びの多い実習でした。何よりプロジェクトメンバーと対話しながら、認識や課題感のすり合わせ、方向性の修正を行ったことが、実践力につながったのではないかと思います。別の企業の実習では、Google Apps Scriptを使った処理の作成が課題でした。就職には結びつきませんでしたが、HTMLなどスキルの幅を広げられたことに成果を感じています。
そして、事業所に寄せられるさまざまな求人情報の中から、現在勤めている会社と出会えたのです。オンラインで実施された5日間の企業実習でツール作成に取り組み、面接選考を経て内定をいただきました。Neuro Diveの学習内容を活かせる業務内容と、コミュニケーションを図りやすい雰囲気が決め手となり、入社を決意しました。
Neuro Diveで支援員のサポートを受けながら、採用担当者に伝えるべき障害特性や自己対処、配慮事項について繰り返し分析できたことが、内定につながったのではないかと思います。ポートフォリオのプレゼンテーションや模擬面接の場を数多く設けていただいたことも、力になりました。それらのサポートがあったからこそ、スムーズに就労へ移行できたのだと感じています。
社内コミュニケーションを意識しながら業務自動化を推進
現在の主な業務は、Excel VBAを用いた事務作業の自動化や社内アプリの制作、書類申請・承認フローの構築などです。従来、Excel上に手入力していた作業はExcel VBAによる自動化が効率的だと思いますが、必要に応じて新たなツールも導入しています。ケースバイケースに応じたツールを活用して業務自動化を推進し、ヒューマンエラーの防止や人的リソースの有効活用を実現したいと考えています。Neuro Diveで学んだプログラミングスキルのおかげで新たな言語もスムーズに習得できますし、実習で学んだ業務フローが仕事の柱となりました。
実習での経験を活かし、大きな手戻りが発生しないようチャットツールでのこまめな報連相を徹底。チャットだけでなく、ラジオ体操などの日課や雑談に参加し、積極的に同僚と言葉を交わすようにしています。対面コミュニケーションは、心理的な壁を取り除き、報連相を活発化するうえで重要な要素です。また会話の中で「Oさんが作成したツールを使ったら、終日かかっていた作業が一瞬で終わった」と喜びの声をいただくこともあり、大きなやりがいを感じられます。
社内ニーズに対応できるよう、スキルアップを図りたい
今は、Excel VBAを使った業務自動化に集中しつつ、Pythonの使用許可を申請しているところです。Neuro Diveでは、Webスクレイピングやデータ分析に特化したPythonライブラリを学びましたが、新たなライブラリの習得も考えています。社内の方々の仕事内容を丁寧に把握しながら、さまざまな自動化案件に対応できるよう、使用できる言語やツールの幅を広げていくつもりです。
Neuro Diveの擬似就労で得たさまざまな気づきが、現在のワークスタイルを形づくっています。これからNeuro Diveを利用される方も、ITアドバイザーや支援員のフィードバックによって、自分では気づけなかった課題や改善策を見出だせることでしょう。自己理解や能力伸長のためにも、定期面談などを通じて積極的に支援員と情報共有することをおすすめします。