Best Practice Neuro Diveの成功ストーリー (就職者の声) 注意欠陥・多動性障害(ADHD)の方のストーリー
言語学研究者、教育者という職歴をもちながら先端IT分野に転身した卒業生に話を伺いました。ゼロからスタートし、IT分野での就労を果たすまでにはさまざまな苦労や達成感を味わったというNさん。専門外の分野からIT分野に挑戦した背景やNeuro Diveでのスキルアップ、就職活動について語っていただきました。
文系の世界から先端IT分野へ。新たなスキルを活かし社会に恩返しを

N. Aさん(30代)
- Neuro Dive 大阪の利用期間:1年1カ月
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前職
教育職 -
就職先
ロボット関連企業
マルチタスクへの困難から医療機関を受診
大学で教員資格を取得し、卒業後は中学校で教鞭をとりました。その後、大学院に進み、言葉の仕組みを理論的・哲学的なアプローチで読み解く生成文法を研究。言語学の修士課程を修了後、高校教師として再び教壇に立ちましたが、教育業界ならではのマルチタスクにはたらきづらさを感じるようになりました。授業とクラス運営、部活動という3つの業務が大きなウェイトを占め、さらに書類作成業務などの細かなタスクが加わります。クラス運営ひとつとっても、生徒一人ひとりに必要な対応が異なるため、40人分のタスクが同時進行しているようなものです。優先順位の見極めやスケジューリングが苦手で、忘れ物や聞き漏らしも多く、業務をさばき切れませんでした。それまで、ストレスとの向き合い方ばかりを考え、はたらきづらさの原因に目を向けていなかったように思います。しかし予備校に転職後、障害があるのではないかという疑いが芽生え、医療機関を受診することにしました。
就労移行支援と出会い、文系から先端ITの道へ
診断が下りるまでの間、偶然にもインターネット広告を通じて就労移行支援制度を知りました。ITに特化した就労移行支援事業所もあると知り、関心が高まったのを覚えています。自分にできること・できないことを整理してみると、マルチタスクや突発的な事項への対処は苦手でも、ひとつのものを作り上げることに向いているのでは、と思いました。ITスキルを想像した時に、プログラミングという選択肢が漠然と思い浮かんできたのです。プログラミングを学べる就労移行支援事業所は数が限られていましたが、3社・6事業所ほど見学しました。最終的にNeuro Diveを選んだ理由は、オンライン指導とポートフォリオ制作、パーソルグループによる就職支援の存在です。特にポートフォリオ制作は仕事の流れを実践的に学べる上、就職活動で自分のスキルを示す材料になります。実務に役立つ実践力を養える点や、就職支援のフローが整っている点に魅力を感じて、Neuro Diveへの通所を決意しました。

「伝える力」を備えたAIエンジニアを目指して
通所にあたって、目標やそれに向けた課題を明らかにするため、支援員とは個別の「支援計画」、ITアドバイザーとは個別の「学習計画」を作成しました。9カ月後に就職活動を開始するという目標を定め、専門領域は「AI・機械学習」を選択。データサイエンスや機械学習の領域はこれまで歩んできた分野に最も近く、大きく舵を切る必要がないと考えたからです。というのも、プログラミングはあくまで手段であり、分析結果を活用してもらうには、アウトプットに軸足を置かなければなりません。そして、分析結果を他の人に提示していくプレゼンテーションにおいて、言語学研究や教育業界で培ってきた「伝える力」を活かせるだろうと考えました。それでも文系出身者にとってはゼロからのスタートなので、ITスキルの習得は容易ではありませんでした。Pythonというプログラミング言語を使用し、Jupyterという開発環境でさまざまなデータ分析に取り組みましたが、目の前には課題が山積みです。ITアドバイザーが細やかにサポートしてくださいましたが、不明点はインターネット検索で調べたり、ほかの通所生に尋ねたりしながら、自走力を高めました。
プログラミングの魅力に目覚め、スキルアップを実現
Pythonを動かせるようになると、レスポンスのスピードに魅力を感じるようになりました。どのような仕事でも取り組みの成果が現れるまでにはタイムラグがあり、自分の取り組みは正しいのだろうかと迷うこともあるでしょう。その点、プログラミングは即座にコーディングの結果が現れるので迷いも少なく、手応えを感じながら作業を進められました。
ITアドバイザーとの定期面談を納期と捉え、「面談前にここまで進めよう」とスケジューリングできたことは大きな成長です。30分間の面談を実のあるものにするため、発表資料も作成しました。否定的な自分をペルソナに設定し、自問自答しながら制作物の欠点を洗い出していくのが自分なりのブラッシュアップ方法です。しかし、第三者視点に立つのは限界があるため、ITアドバイザーの視点に助けられました。実務的なアドバイスによって、ビジネス視点を養えたと感じています。
プレゼンテーションにおいては、これまでの経験を応用しました。教育現場では、生徒各々の理解度に応じて伝え方を工夫する必要があります。制作物のプレゼンテーションにおいても同様で、必ず相手を想定し、ITの習熟度に応じた伝え方をシミュレーションしました。

Neuro Diveで先端ITスキルとともにビジネススキルを強化
先端ITスキル講座もビジネススキル講座も、今の自分に役立つものばかりだったと実感しています。以前の私には自らビジネススキルを学ぶという発想はありませんでしたが、Neuro Diveに通所したからこそ、その重要性を知り、スキルアップにつながりました。前職では日々の業務をこなすことに精一杯でしたが、「Will Can Must」のフレームワークや支援員との面談を通じて、自分を見つめ直すことができたと思います。「Will Can Must」は、今の自分が「やりたいこと(Will)」「できること(Can)」「やるべきこと(Must)」を書き出し、方向性を見定める手法です。現在の職場でも活用されています。
支援員との定期面談は、「何かあれば頼れる先がある」というホットラインのような存在でした。「壁打ち」と呼ばれるコミュニケーション手法によって自分自身の特性に気づき、自ら発信できるよう誘導してくれました。壁にぶつかった時、たとえそれを乗り越えられなくても、「自分にできないこと」や「何があればできるのか」を周囲に説明する責任があることを教えてもらえたと感じています。文系出身ならではの苦労もありましたが、挑戦できる環境やサポートに恵まれていたからこそ、あきらめずにやり通せたのだと思います。
上流工程で活躍できるAIエンジニアとなるために
計画通り、入所から9カ月目に就職活動をスタートしましたが、事業所内にも能力の高い人がそろっている中、内定獲得の難しさを実感しました。不採用通知にもめげず就職活動を進めたところ、現在勤めている会社から実習の機会をいただけたのです。1日だけの実習でしたが、データ分析の課題を通じて業務内容のイメージをつかめ、Neuro Diveで身につけたスキルを発揮できそうだと感じました。その思いが通じたのか内定をいただき、現在は実験データの解析を中心とした業務に携わることができています。
入社してまだ半年足らずではありますが、いずれは業務改善に役立つようなデータ分析にも挑戦できるようになるのが目標です。今は、思い通りの解析結果が出るたびにやりがいを感じていますが、それとともに年齢的な焦りも感じています。業務ではNeuro Diveで学んだAI・機械学習の基礎知識を応用できていますが、さらにスキルの幅を広げ、新たな分野にもチャレンジしていかなければなりません。データ分析を一からデザインするには、全体的な流れを把握する必要があります。そのためにも、数学や物理、電気などの理系知識やデータ分析に必要な統計の知識をさらに磨いていくつもりです。
上司は自分の特性を理解してくれていますし、1on1など相談の機会にも恵まれているので、困りごとを解消しながらキャリアアップを目指します。
理系転身のハードルを乗り越えるには
振り返ってみると、Neuro Diveでサポートや環境に恵まれたことも、現在の会社に入社できたことも、幸運だったと思います。これから先、運だけではどうしようもない局面があるでしょう。しかし、これまでさまざまな人から受けてきたサポートに感謝し、自分のできる範囲で精一杯、社会に還元していきたいと思っています。
正直、私のように30代の文系出身者は苦労する場面が多いと思います。だからこそ、支援員やITアドバイザーとの面談をフル活用して、自分の得意・不得意をできるだけ具体的に把握しておくことをおすすめします。配慮事項の明確化ができていると、就職後のはたらきやすさにつながるはずです。