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京都大学文学部から未経験でシステムエンジニアの世界へ飛び込んだものの、ADHDの特性が壁となり、うつ状態で退職したSさん。就労への道標を求めて、先端ITに特化した就労移行支援事業所「Neuro Dive」の利用を決意します。ITスキルの習得や自己分析、資格取得などに取り組み、自分らしいはたらき方と安定した毎日を実現するまでのストーリーを紹介します。

就職者

Neuro Diveで見つけた、建築業界のDXに貢献する道

S.Wさん(20代)

  • Neuro Dive 渋谷の利用期間:1年2カ月
  • 前職
    システムエンジニア
  • 就職先
    株式会社ダイスネクスト

Neuro Diveでの学習

  • AIや業務効率化を学び、DXの「攻め」と「守り」の双方に対応できるスキルを習得
  • 抽象化思考を身につけたことで、問題解決能力が向上
  • ストレスへの対処法を身につけ、はたらきづらさを軽減

研究や開発の妨げとなったADHDの特性

高校時代から小説への関心が高かった私は、「文学への造詣を深めたい」と京都大学文学部に進学しました。サブカルチャーを研究対象とするゼミで、星新一作品をはじめとするSF小説の分野を探究。しかし研究の妨げとなったのが、生活管理の難しさでした。一人暮らしをしていましたが、毎日家事をこなしたり、通学を続けたりすることが大きな負担に感じ、最低限の生活しか維持できなかったのです。「もしかすると自分は発達障害かもしれない」、そんな考えが頭をよぎりました。

卒業後の進路として出版業界・メディア業界を希望していましたが、就職活動で思うような結果を得られず、求職の範囲を広げることにしました。そこで目に留まったのが、未経験者も応募できるシステムエンジニアの求人でした。

採用試験の結果、内定を獲得し、支給された教材や入社後の研修を通じてプログラミングを習得。入社後、JavaScriptなどを用いて社内WEBシステムの開発に携わるようになり、人のニーズや自分のやりたいことを形にできる仕事に魅力を感じていました。

さまざまなプロジェクトを進める中で、黙々と作業に打ち込む自走力や、自分自身で解決策を導き出す問題解決能力がしっかり育ったと実感。3年半勤務したのち転職しましたが、その会社ではイレギュラーの仕事も多く、タスク管理に支障を来すようになりました。作業のやり残しが積み重なるとともにメンタルのバランスが崩れ、とうとう、うつ状態に。休職して医療機関を受診したところ、注意欠如・多動症(ADHD)の診断が下りました。1年間療養してもうつの症状は改善せず、退職に至ります。

自立に向けた新たな選択

その翌年、「一人暮らしに近い形で自立し、新たなスタートを切りたい」との思いから、グループホームへの入居を決意しました。入居手続きの際、相談員の方から利用を勧められたのが、先端ITに特化した就労移行支援事業所「Neuro Dive」でした。これまでの経験を活かし開発エンジニアの仕事に就きたいと思いつつも就労への不安があったため、同じような境遇の人と就労準備を進められる環境に魅力を感じました。

Neuro Dive渋谷事業所の個別相談会で開放感のある空間と丁寧なサポートに好感をもち、3日間の体験利用に参加。機械学習の概要を学び、簡単な機械学習モデルを動かせるようになるプログラムでした。初めは「機械学習なんて難しそう」という印象をもっていましたが、体験してみると意外にもスムーズに習得でき、Neuro Diveを利用する決意が固まりました。

話題のAIが身近な存在に

当初、うつ状態は改善していましたが睡眠などに課題があったため、通所のペースは週4日でした。支援員からアドバイスをもらいながら生活リズムと体調を安定させ、3カ月後には週5日で通所できるようになりました。前職でBIツールを活用したシステム開発に携わった経験があり、その延長でAIスキルを獲得できれば強みになると考え、テーブルデータの自動生成や自然言語処理を学習することに。AIが話題に上ることも多かったので、「実際にやってみたい!」という好奇心も少なからずありました。

一人で黙々と専門スキルを学習する一方、ビジネススキル講座のグループワークでさまざまな人と関わる機会をもてました。「自分の意見を大切にしながら、人の話にしっかりと耳を傾ける力」が身についたのも、グループワークのおかげです。

利用者の中には、AIコミュニティ「CDLE」と渋谷区との共同プロジェクトに参加し、区のデータを活用した成果物作成に取り組んでいる人もいました。私はタイミングが合わず参加できませんでしたが、「役割分担の大変さも含めて良い経験になるだろう。面白そうだな」と思いながら、仲間の奮闘を見守っていました。

WEBシステムとAIの融合に挑戦

講座を通じてAI・機械学習のスキルを磨き、成果物作成に着手しました。「WEBシステムにどのような形でAI処理を組み込むか」という視点でテーマを選定し、2つの成果物を作成することにしました。一つはスマートフォンの位置情報を取得し、現在地周辺の桜の開花時期を予測・表示するWEBシステム。もう一つは、SNSの投稿内容にヘイトスピーチや暴言が含まれていた場合にアラートを出すWEBシステムです。

前職で習得したWEB知識と、Neuro Diveで新たに学習した機械学習や自然言語処理を応用し、あまり苦もなく作成できました。AI機能もスムーズに取り入れることができ、当初の目的を達成できたと思っています。しかし、実際のビジネス場面を想定すると、「作って終わり」ではなく、成果物の魅力を効果的に伝えなければなりません。ITアドバイザーから指摘を受けたのは、主にプレゼンテーション面でした。

具体的には、「レスポンシブデザインをもっとアピールすべき」「前提知識が不足している」といった指摘です。どのようなデバイスで閲覧してもレイアウトが崩れないレスポンシブデザインは、UI(ユーザーインターフェース)に直結するためもっとアピールすべき、というアドバイスが参考になりました。また、アラート機能に関するアドバイスは、現実的にSNS上で起こっているヘイトスピーチ問題や、その問題に関連する法律の整備状況について触れると、聞き手の関心を引きやすいというものでした。「聞き手が関心をもっている部分にフォーカスして説明する」という手法も学びました。

ITアドバイザーとともにブラッシュアップを重ねることで、聞き手の理解度や共感度を考慮に入れられるようになったと自負しています。人前で話すことに苦手意識をもっていましたが、事業所内の成果物発表会でしっかりアピールし、好感触を得られたことは、とてもうれしい経験でした。また、成果物の作成期間中、常に進捗状況をITアドバイザーに共有していたので、報連相の習慣が身についたことも収穫の一つです。

見つめ直した「自分が望むはたらき方」

Neuro Diveでは、ITスキルの習得や成果物作成と並行して、職業準備性講座の受講や資格取得にも取り組みました。職業準備性講座で「Will Can Must」のフレームワークを活用し、自分の考えや価値観を整理したことで、就職への迷いが減りました。自分は業種よりもはたらき方や待遇を優先する志向のもち主だと気づけたことで、応募先を選択しやすかったと感じています。

職業準備性講座の中で面接練習を重ねていたことも、就職活動への自信につながりました。支援員から一般雇用と障害者雇用の違いを教えていただき、「障害者雇用であれば、できることの幅が限られていても理解を得られるだろう」と、障害者雇用を目指すことに。

本格的な就職活動をスタートしてからは、支援員との密なコミュニケーションを心がけていたので、段取りに困る場面はほとんどありませんでした。とはいえ、書類選考をなかなか突破できず、落胆する日々が続きました。そのようなとき、気を紛らわせてくれたのが資格勉強です。

Neuro Diveの利用者は、統計検定や機械学習関連の資格を取得する人が多いのですが、私は応用情報技術者試験と情報処理安全確保支援士試験を目指していました。資格勉強を通じて、システムを作る際にも細かな部分に目が行くようになり、取得して良かったと思います。

建築業界のDX貢献を目指す今

就職活動に苦戦するなか、就職支援サービス「dodaチャレンジ」の就活エージェントから、私の希望に合う求人を紹介してもらいました。それが現職の求人だったのですが、ITエンジニアとしてキャリアパスを描ける企業風土と、テレワークを中心とした勤務形態が魅力でした。社内には開発専門の社員も多く、私も適性のある仕事に専念できそうだと感じました。「ミスマッチを防ぐためにも、面接では自分をあまり取り繕わないようにしよう」と考え、正直な姿勢で臨めるよう支援員と面接練習を反復。面接では、さまざまな開発に携わった経験や、Neuro Diveの通所実績を評価していただけたと感じました。

無事採用され、入社後は建築業界で利用される3Dソフトのプラグインを作成しています。具体的には、設計上の規格不適合を検知するアラート機能などの作成です。建築業界は未経験なので専門用語など覚えなければならないことだらけですが、自分のデモンストレーションに対してクライアントから良い反応をいただけるとやりがいを感じます。建築業界はDXの推進に課題を抱えているので、今後、クライアントの要望をしっかり汲み取り、ニーズを満たせるプランを提案できるようになりたいです。壁にぶつかることがあるかもしれませんが、現在もNeuro Diveの定着支援を受けているので、「仕事の悩みを相談できる相手がいる」という安心感があります。

生活リズムの安定によってワーク・ライフ・バランスを実現

現在、リモートワークが中心ですが、Neuro Diveで身につけた報連相スキルを活用したり、仕事専用のスペースを設けたりすることで、特性に対処し仕事の効率化を図っています。ToDoリストのツールを活用してタスクを細分化し、些細なことも忘れないようメモしているので、タスク管理の課題も感じていません。今のところ、仕事でAIスキルを発揮する機会はありませんが、今後、AIを導入するプロジェクトが立ち上がったときには率先して手を挙げたいと考えています。

終業後は料理やゲーム、読書などを楽しみ、ワーク・ライフ・バランスを実現しています。これからNeuro Diveを利用する方も、生活リズムの安定を図り、遅刻しないことを最優先事項にしてください。Neuro Diveでは、無遅刻で通所していた利用者の方がスムーズに内定を獲得していた印象があります。悩みや迷いが生じたときは支援員に相談してみてはいかがでしょうか。