就職成功ストーリー (就職者の声) 広汎性発達障害の方のストーリー
IT系の大学を卒業し、「データ分析領域ではたらきたい」という夢を抱いていたものの、スキルの不足や体調への不安を感じていたYさん。「夢を実現するラストチャンス」と、先端ITに特化した就労移行支援事業所「Neuro Dive」の利用を決意します。深層学習などの応用手法や特性への対処方法を身につけ、夢への切符をつかむまでのストーリーを紹介します。
Neuro Diveでのリスキリングが、データ分析領域への最後の扉だった
Y.Tさん(20代)
- Neuro Dive 横浜利用期間:1年3カ月
-
就職先
データ分析・AI専門企業
Neuro Diveでの学習
- 基本的なテーブルデータ分析から着手し、基礎力を醸成
- データ分析コンペティションに参加し、予測精度の向上を追求
- 成果物の作成を通じて、深層学習や生成AIの開発手法を習得
障害特性に悩みながらも、ITにひと筋の光を見出した学生時代
子どもの頃から、コミュニケーション面や生活面で困りごとを感じていました。人前で話すことが苦手で、授業中に指名されると言葉に詰まるのが常でした。高校2年生になると睡眠の課題もあらわれ、日中に強い眠気に襲われるように。今思えば障害によるものでしたが、当時は対処法もわからず、朝起きられない状態を「怠け」だと誤解され、一人で苦しんでいました。
高校卒業後、精神的な不調から通院を始め、その過程で発達障害が判明しました。診断を聞いたときはショックよりも、「やっぱりそうか」と納得し、ホッとしたのを覚えています。療養中、「発達障害の症状をITが緩和する」という記事に出会ったことがきっかけでITに興味をもち、23歳でIT系の大学に進学。WEBアプリケーションの開発を学んでいましたが、学習を進めるうちデータ分析の奥深さに惹かれていきました。
子どもの頃、データが羅列された本を眺めては「これが何を意味するのか」と考えるのが好きだったので、自然な流れだったのかもしれません。ゼミの最終テーマに選んだのはワードクラウドです。まずゼミの感想を2,000字程度のレポートにまとめ、その中から重要な単語を自動抽出し、頻出度に応じて可視化するモデルを作成しました。
「データ分析領域に就労する最後のチャンス」と、Neuro Diveへ
大学卒業後、IT業界へ進みたい気持ちはありましたが、体調はまだ不安定でした。はたらくための訓練や就職活動のサポートが必要だと感じ、就労移行支援制度を利用することにしました。
Neuro Diveを選んだのは、就労準備と高度なITスキルの習得を両立できる点が、他にはない魅力だったからです。大学では、深層学習のような応用手法を深く学ぶ機会が少なく、データ分析領域の就労を目指すには、より専門性の高いスキルが必要だと感じていました。私にとって、Neuro Diveは「データ分析領域の就労に向けたラストチャンス」でした。
見学時、専門用語が飛び交う様子を見て、そのレベルの高さに圧倒されました。「これほど高い専門性を習得できるなら、就職には困らないだろう。でも、学習についていけるだろうか」と不安もありましたが、支援員がそれまでの経緯や現状を丁寧にヒアリングし相談に乗ってくれたので、利用への不安が軽くなりました。

綿密な学習計画と徹底的な試行で、分析スキルを磨き上げる
「闇雲に学習しても伸び悩む」と考え、ITアドバイザーと相談しながら学習計画を練り上げました。「何を」「どの程度の期間で」「どのレベルまで」習得するかを考えながら学習計画を作成し、ITアドバイザーに共有。専門的なアドバイスを受けながら、効率的な学習ルートを設計できたと思います。
学習はテーブルデータの基本分析から始め、段階的に深層学習による応用分析へとステップアップしました。自分の学習内容やレベルに釣り合ったコンペティションにも参加しましたが、「馬の健康状態予測」というテーマに苦戦。馬の医療に関するドメイン知識がなく、解析結果の妥当性を判断できなかったのです。
そこでITアドバイザーから紹介された参考教材で理解を深めるとともに、試行回数に徹底的にこだわりました。基本モデルで分析・試行・記録を重ねるだけでなく、複数のモデルを組み合わせてみたり、思いついたアイデアを試してみたり、できることはすべて実践。行き詰まったときは、ITアドバイザーの助言や先輩利用者の勉強法が参考になりました。
先輩利用者から学ぶことは多かったので、ランチをご一緒するなど、交流の機会をもてて良かったと思います。 1,500人以上が参加した終了済みのコンペティションにおいて、公式順位ではないものの、プライベートスコアで2位相当の評価を記録しました。この結果は大きな自信につながりました。
3つの成果物を作成し、分析手法を確立
Neuro Diveでは、就職活動のポートフォリオとなる成果物を作成します。私は3つのテーマを掲げて成果物に取り組みました。代表的な手法への理解を深めようと、1つ目は「基本的なテーブルデータ分析」というテーマを選定。2つ目は「時系列センサーデータ分析」というテーマで、深層学習を用いて非構造化データを処理・分析する手法を学ぶことにしました。3つ目の「RAGシステム構築」は、生成AIを開発する手法の習得を目的にしています。
「RAGシステム構築」では、Neuro Diveでの自分自身の歩みをデータソースにしました。1年以上利用し、支援員との振り返りに用いた日報データや、IT学習の成果、自己分析の記録など、さまざまなデータがたまっていました。それらのデータをAIが扱いやすい形に整理・構造化。「2025年1月には何をしていましたか」といった質問に対し、AIが私の過去の記録を正確に参照して回答するモデルを構築しました。

対等な関係性のなかで、障害に対する引け目を払拭
スキル習得と並行し、はたらくための基礎力を養いました。利用開始期や就職活動期など、フェーズに応じたサポートをしてくださった支援員に感謝しています。利用開始期は、自分の特性や対策を把握できていなかったので、支援員と一緒に客観的な視点から見つめ直しました。行動記録表をつけ、面談で一日を振り返りながら、生活リズムを安定させる術を習得。また、週末や在宅学習日など「予定が曖昧な日」に体調を崩しやすい傾向があることが判明。そこで、一日の流れを見通せるようスケジューリングを習慣化し、セルフケアの術を身につけました。
コミュニケーション面にも課題がありましたが、「対処法を模索し、グループワークで実践する」というサイクルによって対人スキルを向上。自分に最も役立ったのは、「話すべきことをノートにまとめるなど事前準備を徹底する」という対処法です。グループワークは、社会人未経験の私にとって、ビジネスマナーを実践的に学べる貴重な機会でもありました。
就職準備期には、特性への自己対処と企業への配慮事項を整理し、支援員に添削してもらいました。睡眠障害やコミュニケーションの課題、聴覚過敏などの特性をしっかり伝えた上で、「初めは時短勤務からスタートさせてもらえないか」「可能な限り業務内容を事前に伝えてもらえないか」「業務中のイヤホン使用を許可してもらえないか」という配慮事項について企業側と建設的な相談ができるまでに。障害と折り合いながら安定的にはたらくための道筋を整えました。
以前は「社会から必要とされないのでは」と、障害がありながら就労することに後ろめたさのようなものを抱いていました。でも、対等に接してくれる支援員と接するうちに、その気持ちはいつしか消えていました。
企業実習で即戦力を証明。思いがけずつかんだ希望のキャリア
実務を体験するため、採用に直結しない企業実習に参加しました。支援員から声を掛けてもらい参加した企業実習は、ニューロダイバーシティ推進プロジェクトの一環として開催されたものでした。1社目ではITセキュリティ業務を体験し、専門家の方々と交流する機会をもてたことで、業界への憧れが確信に変わりました。
2社目も、ニューロダイバーシティ推進プロジェクトの一環として開催された企業実習に参加し、1カ月間、生成AIを用いた開発に取り組みました。求められる専門性の高さに焦る場面もありましたが、「Neuro Diveで習得した知識を流用すれば理解できる」と感じたので、理解を深めながら業務にあたり、担当者への報告連絡相談を欠かしませんでした。
採用を前提とした企業実習ではなかったので、終了後に「入社しませんか」とお声掛けいただいたときは、あまりの急展開に驚きました。業務を遂行しようとする姿勢や、専門用語を交えてしっかりと進捗状況を伝えた点が、即戦力・技術力のアピールにつながったのではないかと思っています。
実習中、月例の懇親会に参加させていただいたとき、立場に関係なく和気あいあいと会話し、誰もが居心地の良さを感じていらっしゃる様子が伝わってきたので、そのような社風のなかではたらけることに喜びを感じます。入社のお声がけをいただいた日は、久しぶりに寝不足になるほど高揚していました。支援員も驚いていましたが、早速、状況をヒアリングし今後の動き方を検討していたので、そこはプロだなと感じました。
企業実習を通じて実感したのは、「世の中の障害に対する向き合い方は変わってきている」ということです。障害のある人が活躍する場を見つけるまでにはさまざまな困難がありますが、忍耐強く前に進めば自分の居場所は見つかるのだと、前向きな気持ちになれました。

次世代の生成AI技術者像を描く
Neuro Diveの卒業と入社を間近に控え、将来のキャリアビジョンも鮮明になってきました。生成AIを用いた開発分野では、技術者の役割が変化しつつあります。生成AIの急速な進化によって、技術者がおこなっていた作業もAIが肩代わりできるようになり、技術者の役割として「設計」の重要性が高まっている状況です。そのため、生成AIだけでなくその周辺技術にも触れていき、将来的には多様な技術の組み合わせを設計し、課題解決に貢献したいと思っています。
変化の速いIT業界では、情報のアップデートも重要です。毎日、IT全般の情報に幅広く目を通し、週一度、専門メディアで最新情報をしっかり追うことにしています。就職後もNeuro Diveの定着支援によって、信頼関係を築いている支援員と話をする機会が設けられているのは、とてもありがたいことだと思っています。
未経験からデータ分析の道を目指すのは、決して簡単ではありません。しかし、必要なスキルを洗い出し、計画的に取り組めば道は開けます。Neuro Diveには、それを支えてくれるITアドバイザーと支援員がいます。どうかあきらめず、自分の居場所を見つけてください。