Best Practice Neuro Diveの成功ストーリー (採用企業の声) 注意欠陥・多動性障害(ADHD)の方のストーリー
先端ITに特化した就労移行支援事業所「Neuro Dive」では、AIやデータサイエンスの分野で活躍する人材を育成し、長期就労をサポートしています。就労支援の一環として実施している企業実習は、ニューロダイバーシティの意義を発信し、多様な人材を雇用するきっかけづくりを担っています。
今回は、注意欠陥・多動性障がい(ADHD)のあるNさんの企業実習事例について、受け入れを行った株式会社ダイナムの人事担当者から、実習の課題や成果、Neuro Diveの可能性についてお話を伺いました。データ分析能力に秀でたNさんの企業実習が、障がい者受け入れに対するナレッジの構築につながり、ニューロダイバーシティの展望が広がったそうです。
高い意欲と能力を持つ障がい者の雇用は職場の活性化につながる
株式会社ダイナム
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人事部 戦略人事担当 Mgr
生沼雄司さん -
人事部 戦略人事担当
松木美子さん - 実習期間:2022年11月中旬~12月中旬(2週間)
- ※以下敬称略。ご所属はインタビュー当時のものです。
「ともに働く、ともに成長する」というビジョンの実現に向けて
松木
ダイナムは、創業以来チェーンストア経営に基づく多店舗展開を実践しており、全国390店舗以上のパチンコホールを運営する企業です。7,000名以上の従業員が就業しており、障がい者雇用についても150名以上の採用実績があります。「ともに働く、ともに成長する」というポリシーのもと障がい者雇用に取り組み、事務や接客、物流などさまざまな業務で障がい者人材を活用してきました。
しかし、一人ひとりの能力や特性を把握し、個々に応じた受け入れ体制を整備するまでには至っておりませんでした。雇用後のフォローについても課題があり、障がい者の方が真に活躍し定着するための体制づくりを長年模索してきました。ちょうどその頃、Neuro Diveの取り組みを知り、障がい者雇用のナレッジやノウハウを蓄積すべく支援を受けることにしました。
生沼
弊社のキャリア形成は、店舗運営が軸になっていることから、社員の9割以上が営業現場での接客業務からスタートしており、IT系やDX系の人材育成を内製化するのは難しい状況です。営業現場を裏から支えるIT人材やDX人材が活躍する場は多分にあるので、外部に頼らざるを得ません。Neuro Diveが先端ITに特化している点は、弊社にとって大きな魅力でした。
高いデータ分析能力は即戦力となる
生沼
2年前からNeuro Diveの企業実習の受け入れを開始しましたが、重視しているのは障がい者一人ひとりの能力や特性を把握するためのフローを確立することです。Nさんを受け入れるにあたって、本人ととことん向き合うことに注力しました。どのような障がい特性を持っていて、仕事や日常生活にどのような影響を与えるのか、また本人はどのような課題を持っているのか、詳細にヒアリングした上でプログラムを作成しました。事前にNeuro Diveの担当者とすり合わせができたおかげで、本人と向き合う準備は万全でした。
新卒のNさんからは、社会で通用するタスクを経験したいという要望がありましたので、企業実習では、計画的に物事を進めること、期間内に成果を出すことの体感を目標として取り組みました。まず驚かされたのは、Nさんのデータ分析スキルの高さです。分析手法の軸となる5つの分析パターンと3つの視点(成長性、収益性、生産性)の考え方をしっかり持っていることがわかり、高いクオリティを求めても大丈夫だと判断しました。また理解力も高く、情報収集などのインプット、表やグラフを使って結果を表現するアウトプットともに長けている人材でしたので、実際、短い期間でも十分な成果を出すことができていました。さらに多角的な視点や観点を加えられれば、より高い成果物、実務に通じるアウトカムを発揮できるのではないでしょうか。
今回、部署内の従業員には、障がい者という先入観を捨て、新卒社員の一人と想定してNさんを受け入れてもらえるよう情報共有を行いました。しかし、そのような配慮をしなくても、働くことに前向きで能力の高いNさんと接し、みな障がい者に対する意識が変わったようです。
企業実習が部署内の意欲向上につながった
生沼
Nさん本人から、計画立てて物事を進めることが苦手だという話があったので、期日内に一定の成果をあげるためWBS(作業分解構成図)を取り入れました。データ分析を、収集や抽出、加工といったフェーズに細分化し、目標時間の設定や進捗管理にトライすることを提案。毎日、進捗を報告してもらい、作業工程の見直しや時間調整を行いながらブラッシュアップしました。企業実習においては、適宜プログラムを調整する柔軟性が必須だと考えています。実習者の心身に負担をかけないよう、最終日に向けてタスクのレベルや量を調整するようにしています。
また、どの企業でも求められる問題解決能力や業務設計能力の習得に向けて、OFF-JTの場を設けました。特に、上司のマネジメントスタイルを7つに分類するレクチャーがNさんの関心を引いたようで、「面白かった」という感想をもらいました。今後、仕事上でさまざまな人と関係を築く中で、レクチャーの内容を思い起こしていただければうれしいですね。
最終日には成果発表の場を設け、受け入れ担当者以外の従業員にも同席してもらい、フィードバックを行いました。全社員がデータ分析の素養を持っているわけではないので、「自分に置き換えてみると期限内で同じ成果をあげるのは難しい」「気づかされることが多々あった」と驚きの声が多くあがりました。今回の企業実習を通じて、従業員の間に障がい者理解が深まっただけでなく、仕事の進め方など業務活性化の面でも良い刺激を受けたと感じています。
部署の壁を越えて障がい者の活躍の場を広げたい
松木
Neuro Diveの支援を受けるまでは、障がい者雇用に必要な視点を持つことに課題を感じていましたが、2年経った今では障がい者が活躍するスキームを構築できたと実感しています。当初の目的であった「受け入れに必要な体制や準備、フォローなどのナレッジの獲得」も達成できたと感じています。昨年度から、障がい者雇用枠においても、本部での業務トライアル制度や正社員登用制度を導入しました。意欲のある障がい者人材には、キャリアアップできる道を提供していきたいと考えています。
生沼
多店舗展開を実践する弊社では、分散型の雇用体制をとっているため、部門の壁を越えて障がい者雇用に対する理解を促す必要があります。ITスキルに加えて人事や財務、営業などの専門知識を持つ人材を開拓できれば、障がい者雇用のフィールドは一層広がっていくことでしょう。
松木
企業実習を経て実感するのは、「企業は人に支えられている」ということ。少子高齢化が進む中で今後の労働市場を概観すると、多様性を受容できる企業風土を醸成しなければ生き残っていけません。一刻でも早く社内でダイバーシティに対する意識改革を推進したいと考えています。そのためにもNeuro Diveと良好な関係を維持し、企業実習だけでなく採用につながる好事例をつくっていきたいと思います。
実習先企業のご紹介
ダイナムは、1967年の設立以来、「パチンコを誰もが気軽に楽しめる“日常の娯楽”に改革する」というビジョンの実現に向けて挑戦し続けるリーディングカンパニー。「ローコスト経営」「多店舗展開」を実践し、「街と生きるパチンコ。」を目指し、ストレスからの解放、心の豊かさを体感できるエンタメを提供しています。ダイバーシティ戦略として、「女性活躍推進」「ワークスタイル」「LGBTフレンドリー」「障がい者雇用」「タレントマネジメント」を柱に取り組んでいます。
企業名:株式会社ダイナム
※株式会社ダイナムの表記ルールに合わせ、「障害」を「障がい」、「はたらく」を「働く」と記載しております。