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Neuro Diveで先端ITとビジネススキルを習得した方は、そのスキルを実際のビジネスシーンでどのように活かしているのでしょうか。また、Neuro Diveの利用者を採用した企業は、DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)に対してどのような方針を策定し、障がい者人材を受け入れているのでしょうか。今回は、IT分野における障がい者雇用について、採用企業担当者と就職者双方の視点から語っていただきました。

採用企業

就職者✕採用企業担当者クロストーク「障がい者人材の活躍が競争力強化を加速させる」

日本板硝子株式会社

  • クリエイティブ・テクノロジー事業部門 事業支援部 相模原事業所総務課長 / 人事部担当部長
    奥野 寛之さん
  • 相模原事業所 総務課 EHSグループリーダー
    水谷 幸仁さん
  • 相模原事業所 総務課 EHSグループ
    S.Yさん(Neuro Dive 卒業生)
  • ※以下敬称略。ご所属はインタビュー当時のものです。

日本板硝子株式会社 ロゴ

世界最大級のガラスメーカーとして業界をリードする日本板硝子株式会社(NSGグループ)。100年以上の歴史を誇り、「建築用ガラス事業」「自動車用ガラス事業」「クリエイティブ・テクノロジー事業」という主要3事業を通じて、幅広い産業の発展に貢献しています。2006年の英ピルキントン社買収を経て、従業員数はグループ全体で約25,000人。世界各地に主要な製造拠点を持ち、100ヵ国以上で製品を販売しています。

長年、I&D(インクルージョン&ダイバーシティ)を推進してきましたが、2023年に「企業文化改革には、多様性を認め受け入れる風土の醸成が不可欠である」と、新たにDEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)ポリシーを策定。この方針を基に人材の多様性を推進しており、障がい者雇用にも注力しています。

2023年11月、先端ITに特化した就労移行支援事業所「Neuro Dive」から一人の利用者が日本板硝子株式会社に入社しました。障がいのある先端IT人材の雇用は、挑戦的な試みです。DEIの課題や現状、目指すべき方向性について、日本板硝子株式会社 相模原事業所の総務課長・奥野さんと、総務課 EHSグループリーダー・水谷さん、そして同課にご配属となったNeuro Dive 卒業生Sさんに語っていただきました。


日本板硝子 奥野さん

課題解決に向けた重要なピースとして障がい者人材に着目

―Neuro Diveと連携しIT人材雇用に取り組んだ経緯について

奥野

日本板硝子株式会社は本社および各事業所でDEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)ポリシーに則った雇用を進めています。相模原事業所も同様ですが、従来の障がい者雇用は緑化や事務など軽作業への配置が主でした。もちろん、企業にとって価値のある人材活用ですが、競争力向上の観点やDEIのポリシーに鑑みると、より個々の適性に応じた配置を進めるべきだと考えました。

そのために、まずは事業所内のリソースとノウハウを整理して、課題の掘り起こしを行いました。その結果、業務によってはExcelの手入力でデータを管理していたり、複数のファイルが連携されていなかったりと、より作業効率を高めることが出来る工夫の種が多く存在することが分かりました。しかしながら、効率化を進める上でマクロや関数を使いこなし、デジタル化するノウハウは事業所内には蓄積されていませんでした。社内でディスカッションした結果、事業所が抱く理想と現実のギャップを埋め、業務効率化に貢献してくれるのはIT人材だという結論に達しました。

私は相模原事業所の総務職に就いて2年になりますが、前職でも障がい者雇用に携わっていた関係で、パーソルダイバースと付き合いがありました。Neuro Dive開設前でしたが、当時からIT分野に秀でた利用者が多いという印象をもっていたのです。そこで、IT人材雇用についてパーソルダイバースに相談したところ、「実は、IT人材の育成に特化したNeuro Diveという就労移行支援事業所を開設したんですよ」という話を聞き、まさに渡りに船でした。当社の企業実習に参加してくれたSさんは、課題解決のために足りないピースを埋めてくれる人材だと考えました。

日本板硝子 水谷さん

ハードスキルよりソフトスキルを重視した企業実習

―応募動機・企業実習について

S
私はIT系の学校で学び、ITエンジニアの職に就いていました。ITエンジニアを退職した後、ジェネラリスト志向が強かったことを思い返し、ジェネラリスト志向のエンジニアとして再就職したいと思っていました。Neuro Diveでは機械学習やBI、VBA、RPA、アジャイル開発手法など幅広いスキルを習得できたので、それらを出来るだけ活用できればと思っていました。幅広い事業を展開する日本板硝子株式会社なら、DXを推進する中で幅広い業務に携われるのではないかと思い、企業実習に応募しました。

水谷
企業実習ではSさんの思考経路やアウトプット方法を知りたいと考えました。そこで、課題を2つ提議し、Sさんにアイデアを出してもらうことにしたのです。一つ目は、「社内健康診断の結果を分析しデータヘルスを実践するにはどのようなプログラムを構築すべきか」という概括的なテーマでした。

S
Power BIでダッシュボードを数点作成しましたが、Neuro Diveの講座でPower BIやPythonのデータ分析ライブラリ「Pandas」の使い方を学んでいたことが役立ちました。また、プレゼンでは成果物発表等で繰り返し発表していたことも役立ちました。

水谷
もう一つは、「産業廃棄物処理に関する請求書の事務処理を効率化するには」という課題でした。企業実習は2週間程度に限られていたので、アイデア出しとプレゼンテーションに取り組んでもらいました。正直なところ、こちらの意図を汲み取る理解力や、大勢の前で明確に説明できるプレゼンテーション能力には驚かされましたね。Neuro Diveが実践的なスキルの習得を重視している証ではないでしょうか。

S
前職のITエンジニア時代に身につけたスキルをNeuro Diveでブラッシュアップできたのではないかと思っています。プレゼンテーション資料は、伝わりやすさを重視してデザインにもこだわりました。

水谷
企業実習を通じて、Sさんは自ら道を切り拓いていける人材だと確信し、総務課のEHSグループで勤務してもらうことになりました。

特性に合った働き方を選択できるよう勤務形態を多様化

―勤務形態について

S
基本的には職場勤務ですが、週1日の在宅勤務とフレックス勤務制度を活用しています。

奥野
在宅勤務制度やフレックス制度を導入する利点は、働き方が柔軟になることより、働き方の選択肢が増えることだと考えています。自分の特性や状況に合った働き方ができるよう、選択肢を増やし、主体的に生産性を最大化できることが望ましいという意図です。ただ、職場内にIT技術者はSさん一人ですし、ITによる業務効率化は職場としては新たな挑戦だったので、スムーズな意思疎通を図れるよう職場勤務主体の形態であれば有難いと考えました。

S
私はあまり話すことが得意とは言えないため対面が理想的だと思い、その点は納得して入社しました。週1日の在宅勤務で作業に集中したり、フレックス制度を活用して通院したりと、バランスよく働けていると思います。

日本板硝子 奥野さんと水谷さん

障がいの有無に関係なく、ともに研鑽を積める職場づくり

入社後の業務内容について

S
入社後は、総務部の業務効率化に取り組んでいますが、その内容は大きく分けてプル型とプッシュ型に分けられると思っています。プル型は課題や困りごとをいただいて、それらの効率化を行うタイプ、プッシュ型は課題として挙がってはいないのですが、業務効率化に資すると思われる提案をするタイプとなります。プル型の業務では、各セクションの課題をヒアリングした後、業務効率化に向けてアプリやサービスの仕様策定、調査、プロトタイプ作成などを行っています。また、Microsoft Formsを活用して現場からの情報共有のデジタル化を進めており現在、説明会を少しずつ行い、各セクションへの浸透を徐々に行っています。

プッシュ型の業務は、マスタデータ一元管理やチャットへの移行などが挙げられます。プッシュ型の業務を推進すれば、社内データを的確に集計・分析できないという課題や、社内メールのレスポンスが遅いという課題を解決できると思っております。

水谷
Sさんは、部門を横断したコミュニケーションもスムーズに進めていますね。メンバーからの要求はどうしても高くなりがちですが、折衷案を探り、解決策を導こうとしてくれています。直接対話、メール、そしてチャットを上手く使い分けて、スムーズな報告・連絡・相談が行われています。Sさんのコミュニケーション方法は見習うべきところも多いです。

S
職場でのコミュニケーションには、Neuro Diveで習得したアサーションを活用しています。また、セルフマネジメントも継続しながら自己管理能力の向上も心がけています。前職では長時間仕事に打ち込める持続力が長所だと思っていましたが、今思えば、障がいを引き起こした原因の一つだったのかもしれません。完璧を求めすぎず、ある程度の水準をクリアしたら自分を認めてあげるようにしています。

奥野
自分の現状を分析し、優先順位やペースを意識することは大切です。着実に歩を進めるスタイルは、非常に安心感があり期待にもつながっています。

今後、Sさんに期待すること

水谷
AIに関するG検定を話題にしたところ、すぐに興味を持ちオンライン講座や書籍で情報収集を始め、Sさんの学習意欲は職場のメンバーにも良い刺激を与えています。「学び」において障がいの有無は関係ありません。ともに学び、挑戦していくことの意義を実感しています。

今後、ドローンの設備点検への利用や生成AIを用いた作業効率化などの検討を進めて、DXを推進していきます。
Sさんには、IT分野の最新技術動向やトレンドを追いかけながら、さらなる技術獲得を期待しています。

S
現時点ではSharePointやTeamsなどMicrosoftツールの活用に重点を置いていますが、将来的には業務の更なる効率化を図るため、RPAやAI関連のスキルアップも視野に入れています。

奥野
プロジェクトにも積極的に参加して自らの強みを発揮しながら、総務課に留まらず事業所全体の業務効率化に貢献してもらえることを期待しています。

日本板硝子 奥野さん

DEI推進に向けた課題の一つが、社内の意識改革

―DEI推進に向けた課題について

奥野
当社のダイバーシティ推進は、道半ばであり、障がい者雇用に関しては、設備面・意識面ともにまだまだの状況です。急激に進めても職場の理解が追い付かないこともあるので、地道に進めたいと考えています。Sさんの入社後、社内の意識改革に向け、管理職層を対象にしたダイバーシティ研修をNeuro Diveに依頼しました。障がい者雇用の現状や企業に求められる対策など、ダイバーシティの基礎となる部分について社内の理解を促しました。今、種を蒔き、水を撒いているところですが、芽を出すまでにはある程度の時間が必要でしょう。Sさんの活躍や周囲のポジティブな反応こそ発芽を促す水だと考えているので、順調に芽が出るようサポートしていきたいと考えています。

振り返ってみると、2018年には話題にすら上らなかったNeuro Diveが、2019年には事業を確立させていたので、認可の取得から指導員の確保まで驚異的なペースで実行したのだと推察します。DEIに対する社会的要請や、DX人材に対する企業のニーズに応える形で、事業を推進したのではないでしょうか。DXの波が急速に広まっていることを改めて実感しました。当社も乗り遅れる訳にはいきません。

就労移行支援事業所の連携もDEI推進のカギ

―Neuro Diveに期待すること

奥野
どのような障がいも、仕事上の障害ではなく特性だと理解し、障がい者の働く領域を広げることは競争力強化につながると考えています。多種多様なバックグラウンドをもつ方を受け入れ、それぞれの強みを活かすことが大切です。各自の得意分野に先端ITスキルが加われば、多様化する社会で活躍の場を広げていけるでしょう。企業と就職者、Neuro Diveが協力し、ITのスキルアップをサポートしていくことが、DEI推進の一助になるのではと考えます。

今後のIT人材雇用について

奥野
今後、クリエイティブ・テクノロジー事業部門を更に拡大していきたいと考えていますし、社内外から期待されていると考えています。高機能材料によって新たな価値を創造し高いブランド力を獲得するには、リソースとノウハウを蓄積する必要があるでしょう。ITやDXが求められる局面でNeuro Diveの人材がフィットすると判断すれば、ぜひマッチングのご相談をさせていただきたいと思います。

Neuro Diveの利用を検討している方に向けて

―Neuro Diveの利用を検討している方に向けたアドバイス

S
正直なところ、Neuro Diveに入所する前は、機械学習に全く触れたことがなかった上、数学も高校数学レベルだったので不安でした。ただ、ITについては専門的にある程度のレベルまで学んでいたので、それを元にやっていけるのではないかと思いました。体験の際に、今まで学んだITスキルを元に思っていたよりも簡単に機械学習のモデルを構築できたので、これなら入所しても大丈夫かなと思うようになりました。また、Neuro Diveでは、機械学習だけでなくDXなどの他分野も学べますので、そういった先端ITに興味のある方は、一回試しに体験してみると良いと思います。

※日本板硝子株式会社の表記ルールに合わせ、「はたらく」を「働く」と記載しております。

※今回インタビューをお受けいただいた方の意向を踏まえ、「障害(者)」を「障がい(者)」と記載しております。