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Neuro Diveで先端ITとビジネススキルを習得した方は、そのスキルを実際のビジネスシーンでどのように活かしているのでしょうか。また、Neuro Diveの利用者を採用した企業は、ダイバーシティ&インクルージョンに対してどのような方針を策定し、障害者人材を受け入れているのでしょうか。IT分野における障害者雇用について、採用企業担当者と就職者双方の視点から語っていただきました。

採用企業

就職者✕採用企業担当者クロストーク「ITを活用した業務自動化によって、社内のパフォーマンス向上を実現したい」

オルガノ株式会社

  • 経営統括本部 人事部
    今村 奏恵さん
  • 経営統括本部 人事部
    平井 一樹さん
  • 経営統括本部 人事部
    小野塚 豪さん
  • ※以下敬称略。ご所属はインタビュー当時のものです。

オルガノ株式会社 ロゴ

オルガノ株式会社は、1946年の創業以来、安全で高品質な水を国内外に提供する総合水処理メーカーです。産業用処理を中心に拡大を続ける「水処理エンジニアリング事業」を通じて、地球環境の保全に貢献しています。また、「機能商品事業」の製品は中小型の水処理機器や薬品、食品添加物など多分野におよび、生活ソリューションを提供。70余年、培ってきた技術力で幅広い産業の発展に寄与しています。

ダイバーシティに取り組む同社では、企業行動指針において「一人ひとりがその能力を発揮できる快適な職場をつくる」ことを明文化しています。個々の人権や多様性、個性を尊重し、国籍・性別・信条・身体的条件・社会的身分など属性の違いによる差別を行わないことを宣言。「さまざまな考え方が交錯してこそ、企業価値を向上させる」という考えのもと、従業員の多様性を確保するために障害者雇用、女性活躍推進、グローバル人材活用、シニア人材活用、育児支援、はたらき方改革を進めています。 ダイバーシティ・マネジメントの一環として、IT分野における障害者人材の雇用にも着手。先端ITに特化した就労移行支援事業所「Neuro Dive」に人材マッチングのご依頼をいただき、秋葉原事業所 卒業生の小野塚さんがオルガノ株式会社に入社しました。IT分野における障害者雇用は初の試みだったといいますが、どのような課題や取り組みがあったのでしょうか。今回の採用を担当したオルガノ株式会社の今村さんとOJT担当の平井さん、就職者の小野塚さん、それぞれの視点から入社までの経緯や現状、今後の展望を語っていただきました。


オルガノ株式会社 今村さん

ダイバーシティの推進体制をいかに構築するか

今村さん
オルガノ株式会社では現在の障害者雇用率を引き上げるべく、雇用拡大に尽力しています。従来は年間2、3名の障害者人材を本社で採用していましたが、直近1年間は採用実績が2倍以上に急増し、本社採用のみならず支店採用をスタートしました。

身体障害のある方の雇用率が伸び悩む中、精神障害のある方の雇用を促進する方針を立てましたが、精神障害に対する理解を促進し企業風土を醸成する必要がありました。各部門長には啓発用資料や実際の事例をもとに説明の機会を設けましたが、今後は従業員対象の研修など、社内理解を促す環境整備も視野に入れています。

人事業務の中には、採用条件通知書や入社書類など手作業のデータ入力業務が複数存在し、非効率性に課題感を抱いていました。DXが進む中、あらゆる部門でIT人材を活用する必要性が生じていますが、まずは人事部の業務効率化が急務でした。

一般雇用枠でもIT人材の確保が困難な状況の中、Neuro Diveでは最長2年かけて先端IT人材を育成し、企業ニーズにマッチした人材を紹介していると伺って、ぜひ活用したいと考えました。

オルガノ株式会社 平井さん

採用ミスマッチの回避に向けて、2週間の実習を実施

今村さん
Neuro Diveから紹介された小野塚さんには、入社後のミスマッチがないよう会社や配属部署の現状について詳細にお伝えし、人事部のIT担当である平井がマンツーマンのフォローアップ体制を整えました。

小野塚さん
1次面接で詳細な情報を提供してもらい、不安の払しょくにつながりました。業務に関しては、Neuro Diveで学習したPythonやMySQLとは仕様の異なるツールを使用すると聞き、その場で「できます」と即答できませんでした。ただ、会社として「何がしたいのか」「今後、どこを目指すのか」を説明してもらったことが安心材料になりました。ゴールが明確であれば、到達までの道筋を考え準備を進められます。

今村さん
実際に職場ではたらくイメージをもっていただけるよう、1次面接後、2週間の実習期間を設け、「採用条件通知書の作成業務の自動化」という課題に取り組んでもらいました。障害の特性からコミュニケーションや報連相に困難が生じるのではないかと懸念していましたが、積極的に質問してくれるだけでなく、休み時間に部員とコミュニケーションを図る姿に信頼感を覚えました。

小野塚さん
もともと人と関わることが好きだったので、初職は精神保健福祉士の道を選びました。ただ、その当時は病識がなく、職場でのコミュニケーションエラーに悩んだこともあったのです。病識を得てから特性への理解やコミュニケーションスキルの向上を図り、Neuro Dive入所後は率先してグループワークのリーダーを務めました。意見をまとめる難しさを痛感しましたが、傾聴力や調整力を磨く貴重な機会でした。

平井さん
コミュニケーション力だけでなく、ITスキルの素養も証明してくれました。業務の自動化に用いるツール「UiPath」は学習中とのことでしたが、処理方法を自ら調べ、わからないところは相談しながら使いこなしていたので、難なく業務へ移行できるだろうと確信しました。

小野塚さん
たとえNeuro Diveで習得したツールを使う機会がなくても、学習は無駄になりません。プログラミングを抽象化し概念として蓄えておくと、さまざまなケースに汎用できます。結果が100%正確ではなかったとしても、ブラッシュアップによって精度を高めていくことが、その時の自分にできる最大限でした。実際の職場を体験し、この環境であれば誰かに萎縮することなく自分の能力を発揮できると感じ、「この会社に採用してもらいたい」という気持ちでいっぱいになりました。

平井さん
採用側としては、「選ぶのではなく、ご本人から選んでいただく立場だ」と考えていました。IT人材の社内育成に課題がある以上、外部からの採用に望みを託していましたから。

今村さん
無事採用の運びとなりましたが、実習の実施によって入社後の業務内容を事前に設定できたので、採用側にとっても大きなメリットがありました。

定期的な面談によって心理的安全性を確保

小野塚さん
精神保健福祉士としてはたらいていた頃に発達障害とうつ病の診断を受けましたが、その特性に対処するため、今回の入社時に休憩時間の確保と定期的な面談をお願いしました。

平井さん
配属1カ月目は、不安点をすぐ解消できるよう、30分程度のミーティングを毎日実施しました。業務に慣れてきた2カ月目からは、1時間程度のミーティングを毎週実施しています。

小野塚さん
今は不安点の解消というより、意識づけのためにミーティングをお願いしています。きっかけはある案件の納期遅れでしたが、再発防止のためには面談で進捗状況を共有し、スケジュール管理の重要性を再認識することが望ましいと考えたためです。自分の考えを安心して共有できるのは、メンタルにフォーカスを当てて関わってくださるおかげ。私に対して問題点を指摘しなければならない場面でも、慎重にタイミングを計ってくださっていることを感じます。失敗しても自分の能力を全否定されるわけではない、という安心感をもてました。

オルガノ株式会社 小野塚さん

ITによる業務自動化は、従業員の頭脳活動を活発にする

小野塚さん
現在は経営統括本部人事部に配属され、主に「UiPath」「Excel VBA」を使用しながら人事部業務の自動化を推進しています。たとえば、特定の資格取得者に資格の更新時期を自動通知したり、海外勤務者の給与計算に必要な為替レートの情報をWebから取得してCSV化したり、毎月発生する作業の効率化が主な業務です。仕事を進めるにあたって、知識やスキルだけでなく、IT人材としての考え方や姿勢を平井さんから学んでいます。

平井さん
スキル面の成長も大切ですが、得たスキルを成果に結びつけるには仕事への考え方や姿勢が大切です。それは資格試験やセミナーで身につくものではなく、日々の業務や人との関わりの中で自ら消化吸収していくもの。焦らず着実に身につけていってほしいと思います。

小野塚さん
面談で、私に足りているもの、足りていないものを伝えていただけたことが糧になりました。さまざまなことに挑戦して自分のものにするのは得意ですが、正確性に欠けるところが私の弱点でした。データを扱う際、「すべてを網羅できているか、過不足なく使えているか」を意識することが今後の課題です。ツールについても、一つひとつの挙動について内部構成や因果関係をきちんと把握しておきたいと思います。留意点を細分化すればきりがありませんが、正確なものをつくるためには疎かにできません。

平井さん
マンツーマンのフォローアップ体制だからこそ、小野塚さんと深く関わりながら価値観を共有できるのかもしれません。複数の意見があると小野塚さんも混乱しますし、私も価値観を共有できる人と一緒にゴールを目指したいので、マンツーマン体制の利点を活かしたいと考えています。

今村さん
マンツーマンだからといって人間関係が閉鎖的にならず、他部署とも積極的なコミュニケーションを取っている点が小野塚さんの強みですね。

小野塚さん
前職で精神保健福祉士を選んだのも、人と関わりたいという思いが根幹にあるからかもしれません。ツールは完成して終わりではなく、誰かが活用してこそ意味あるものになります。活用する人や部署を知らないと、より良いものはつくれません。障害をコミュニケーションの障壁と捉えず、自分だけでなく社全体の業務が効率的に進むよう協力体制を築いていきたいと考えています。

平井さん
業務担当者からの依頼に応えるだけでなく、小野塚さんから業務担当者に業務効率化を逆提案するパターンも発生しています。

小野塚さん
今、印刷業務の自動化を提案し、テストを行っている段階です。雑務の時間を短縮することによって頭脳をフル活用するコア業務の時間が増え、仕事の質が向上するのではないかと考えると、非常にやりがいを感じます。

今村さん
今後、小野塚さんにはHRテクノロジーの活用にも貢献していただきたいと考えています。近年、ジョブ型採用や人的資本経営、タレントマネジメントなど、人事業務は大きく変化してきました。現在の人事部には経営戦略と連動して従業員をマネジメントし、企業の優位性を高める戦略人事が求められています。従業員一人ひとりの資質や特性を判断し、配置や異動、昇給や昇格を決めていく上でも、データ・テクノロジーの活用が不可欠です。今後、小野塚さんには人事部内のデータ管理や加工、分析業務に従事していただき、人的リソースを最大限に活用できればと考えています。

オルガノ株式会社 対談

障害者雇用に取り組む企業担当者とNeuro Dive利用者に向けたメッセージ

今村さん
IT分野における障害者人材の雇用は初の試みだったので、正直うまくいくのか心配している部分がありました。今や小野塚さんは人事部になくてはならない存在となっており、当初の懸念は杞憂に終わりました。Neuro Diveの支援員が、小野塚さんの業務内容や体調面、今後のキャリアアップまでヒアリングした結果を私たちに共有し、成果を最大化する体制を一緒につくり上げてくれたことも成功の一因です。今後、あらゆる業種で先端IT人材が求められますが、採用に不安を抱える企業様はNeuro Diveのような専門機関と連携を図りながら、新たな企業価値創出にチャレンジしてみるとよいのではないでしょうか。

平井さん
Neuro DiveはIT領域の中でも特定の分野に特化せず、さまざまな可能性を秘めた人材を育成されているので、多様な人材ニーズに対応できるのではないでしょうか。小野塚さんがITスキルを発揮できるのは、土台部分となるビジネススキルを確立しているからだと思います。先端ITスキルばかりが注目されがちですが、それを支える従来型ITスキルやビジネススキルがなければ実際の業務は成り立ちません。今後もNeuro Diveがビジネス基礎力向上に向けた取り組みを継続されるよう期待します。

小野塚さん
Neuro Diveを利用して自分らしいはたらき方を実現するまでには、さまざまな経緯がありました。ただ一つ言えることは、行動しなければ変化は起きないということです。世間の評価や年収などの数字、肩書よりも、自分のやりたいことを行動基準に据えることが大切だと思います。誰かに言われたからではなく自分のやりたいことを一心に突き詰めていけば、自然と良い結果につながるのではないでしょうか。Neuro Diveで自分のために学びを深めたいという方を応援しています。