今回は、統合失調症の発症から10年を経て、製造業のシステム開発職として活躍する卒業生に、Neuro Diveとの出会いやAI・機械学習の学習、就職活動について語っていただきました。Pythonや機械学習を学び、アクセスログ解析アプリの開発に取り組んだ経験が、再就職への大きな自信につながったそうです。
統合失調症の発症から10年。Neuro Diveとの出会いが再就職への転機に
J.Kさん(30代)
- Neuro Dive 大阪利用期間:10カ月
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就職先
製造業 システム開発 -
前職
IT企業 システムエンジニア
Neuro Diveでの学習
- Pythonの基礎を学び、データ分析・機械学習の土台を習得
- 教師なし学習を活用した異常アクセス検知モデルの開発に挑戦
- Webサーバーのアクセスログを解析するWebアプリケーションを構築
「先端IT特化型」のNeuro Diveに可能性を感じた。人生が前へ進み始めた
大学4年生のとき、私は統合失調症を発症しました。担当教員が私の不調に気づき、それがきっかけで精神科を受診し、統合失調症と診断されました。発症後は長い間療養し、軽快と再発を繰り返しながら、自分自身と向き合い続けた日々だったように感じます。
30代に入り、Neuro Dive(先端IT特化型就労移行支援事業所)の存在を知りました。当時、私は就労継続支援A型事業所に通所していて、なかなか思うように一般企業での就労ができず悩んでいたときでした。SNSでNeuro Diveの広告を見かけ、「先端IT特化型」という言葉に強く惹かれ、自分が求めていた環境かもしれないと感じたことを覚えています。
「興味があったデータサイエンス領域で専門性を高められそうだ」 「新たな一歩を踏み出せるかもしれない」と、Neuro Diveのホームページを読み進めるうち、期待がふくらんでいきました。
Neuro Diveに登録してから10カ月後、私の人生は、再び前へ進み始めました。
大手製造業のシステム開発として就職し、2年半以上経った現在も勤めることができています。あのとき思い切ってNeuro Diveに通所を決意して本当に良かった、人生を前に進めることができたと感じています。
統合失調症発症から10年。長く辛かった時期を振り返る
統合失調症を発症してからNeuro Dive通所に至るまでの10年間について少しお話いたします。統合失調症と診断された後、私は療養のため大学を1年留年し、回復後に大学院に進学しました。大学では有機合成化学の研究室に所属していましたが、大学院ではデータ系の研究室に進学しました。データ系の研究室を選んだ理由は、有機合成化学の研究室ではさまざまな薬品を扱うため常に注意が必要であること、長時間立ち続けることが多く、精神的にも身体的にも負担を感じていたからです。そのため、デスクワークを中心としたデータ系の研究室を選びました。
修了後は就職せず、就労移行支援事業所に入所し、半年後にIT企業に就職しました。仕事の面では成果を出すことができ、比較的早く主任に昇格しました。一方で、月80~100時間の残業が続く環境の中、体調を崩してしまい休職、1年半で退職することになってしまいました。
障害者手帳を取得したのはこのときです。障害を職場に開示せずにはたらき続けることは難しいと考えるようになったからです。それからは、就労移行支援事業所、デイケア、就労継続支援A型事業所を転々としましたが、社会復帰には至らず、進路に悩んでいたところ、Neuro Diveとの出会いがありました。
「がんばりすぎてしまう」自分に寄り添ってくれたNeuro Diveの支援員

社会復帰するにあたり一番の不安は、「がんばりすぎてしまい、また症状を悪化させてしまうのではないか」ということでした。この不安な気持ちがずっと私の中にあったのですが、Neuro Diveの支援員が寄り添いながら話を聞いてくれました。とても安心できましたね。通所中は、週に1回支援員と1on1があり、丁寧にフィードバックをいただきました。またどんな小さなことでも話を聞いてくれるので、不安が蓄積するようなことはありませんでした。
Neuro Diveで過ごす一日は、午前中は障害や自己理解、対処法を学ぶビジネスマインド講座、午後はIT講座を受講し、夕方は他の受講生との交流会・ピアサポートに参加することが多いです。
この交流会やピアサポートは、私にとってとても有意義な時間で、一緒に切磋琢磨する仲間との絆もできますし、新しい気づきを得る機会でもありました。例えば、散歩をルーティンにしている仲間の話を聞いて、自分もやってみようかなと軽い気持ちで始めてみたところ、歩くことで頭がすっきりして心身がリセットできることがわかりました。今は私も「休日に散歩」が習慣となっています。
仲間同士の交流で自分のことを話したり、相手の話を聞いたりすることで、自分ひとりでは得られない気づきも多く、私は徐々に自己理解が進み、対処法を身に付けることができました。10カ月の通所で、「がんばりすぎない、ほどほどでOK」という自分になれたと感じています。
高度な専門知識を持ったITアドバイザーは頼れる存在

Neuro Diveの一番の魅力は、ITの先端スキルを習得できることです。今は名称が変わっていますが、私が選択したプログラムは「AI・機械学習」でした。現在は、「データ分析」と「業務効率化」の2つのプログラムから選択できるようになっています。
私は、療養中に情報処理安全確保支援士の資格を取得していたので、その資格も活かしたいと考え、セキュリティに関する成果物をつくることを目指しました。まずPythonの基礎から学び、最終成果物として、教師なし学習を用いてWebサーバーのアクセスログから異常アクセスを解析するWebアプリケーションを構築しました。担当のITアドバイザーは高度な知識を持っており、教師なし学習モデルの評価方法を一緒に考えてくださったほか、マーケティングの視点から成果物を評価してくださるなど、困ったときにすぐ相談できる心強い存在でした。
特に苦労したのが、教師なし学習モデルの評価でした。教師なし学習では正解ラベルが存在しないため、正答率等がはかれません。そのため、サンプリングしたアクセスログを目視で攻撃か否かを分類するほか、市場に出ているサーバーログ解析ツールの判定結果と比較しながら性能を検証しました。解析ツールでは検出できなかった攻撃を、私が制作したアプリケーションでは検出できたときは嬉しかったですね。有効性を実感し、大きな手応えを得ることができました。
ポートフォリオ作成で工夫したことは、誰が見ても内容を理解しやすい構成を意識したことです。就職活動を想定して作成し、必要に応じて補助資料を添付するなど、相手がスムーズに理解できることを目指しました。
自信を取り戻し、通所から10カ月後に社会復帰へ

就職活動を始めたのは、通所から10カ月後です。ビジネスマインドとITスキルの両面を習得し、社会復帰の準備ができたと自信を持てるようになったからです。
私の就職活動は比較的順調に進みました。少し特殊かもしれませんが、Neuro Diveの成果物発表会で私がプレゼンテーションをしているとき、たまたま現職の部長が見学にいらっしゃり、私の成果物に興味を持ってくださいました。そこで声をかけていただき、実習の機会をいただくことになりました。思いがけないことでしたが、企業や社会から認められたと感じて、素直にうれしかったです。
求人数が豊富で、取引企業とのネットワークに強みがあるNeuro Diveだから、就職活動も安心して進められました。実習に行った会社はほかにもあり、複数の会社から内定をいただくことができました。現職への入社の決め手は、業界の中でも最大手企業ということもあり、長期的に安心してはたらけると感じたからです。
合理的配慮で、自分に合った就業環境で長くはたらける安心感
入社にあたっての配慮事項は、2つ提示しました。1つ目は、週1での1on1面談を実施してもらうことです。定期的に面談の機会があることで、日々の小さな不安や困り事を相談しやすいと考えたからです。もう1つは、こまめに休憩をとることです。私は過集中する傾向があり、気づくと何時間も経っていることがあります。これまで体調を崩してきた原因の一つでもあるので、25分ごとに5~6分の休憩をとりたいとお願いしました。Neuro Dive通所中に自作したタイマーを今も使用しています。
仕事の喜びと新たな挑戦
現在は主にシステム開発を担当し、PHPを使った開発に取り組んでいます。要件定義や基本設計といった上流工程を任されるようになり、コードを書く機会は減りましたが、社内ツールの開発や新規事業・サービスにも関わるなど、仕事の幅が広がっています。特許出願のメンバーとして自分の名前が記載されたときは、取り組みが評価されたように感じて、大きな喜びがありました。
これから挑戦したいのは、上流工程の仕事経験をさらに重ねて、プロジェクト全体を見渡せるようになることと、新しい価値あるビジネスを生み出すことです。どちらも大きなチャレンジですが、前向きに大きな未来を描いていきたいと思います。Neuro Diveでは、身の回りの課題を見つけ、ITの技術で解決する訓練を重ねてきました。その力を現職で存分に発揮していきたいです。
無理をせず、自分らしい「ほどほど」の一歩を。安定したはたらき方を目指して
統合失調症を発症してから今に至るまで、十数年の年月がかかりました。振り返ると、Neuro Diveに通所するまでの10年間は、本当にしんどい時期も多かったと思います。自分の前に壁が立ちはだかっているように感じたこともありました。自分の得意領域で力を発揮したい、でも本当にやれるのか…と、悩みながら何年も過ごしてきました。
そんな日々の中で、私にとって大きな転機となったのがNeuro Diveでした。頑張りすぎないよう自分に言い聞かせつつ、不安になったときは支援員に支えてもらいながら、10カ月通い続けることができたと感じています。ようやく「ほどほどの自分にOKが出せる」ようになりました。
ITスキルの面でも、通所期間中に目標レベルまで到達しました。ITアドバイザーの指導のおかげだと感謝しています。就職した現在も引き続き、Neuro Diveの支援員には継続的にフォローしてくださるので、「Neuro Diveは本当に頼りになる存在」だと心から感じています。
転職を考える方へ。まず療養を大切に。そして自分の可能性をあきらめないで
将来に不安を感じている方、転職を考えられている方は、どうか焦らずに療養を最優先してください。そしてご自身の体調が安定してきたら、Neuro Diveの支援員に相談されてみてはいかがでしょうか。
最後になりますが、精神科を初めて受診したときの大学生だった自分自身に伝えてあげたい言葉があります。「うまくいかないときもあるかもしれないけれど、自分の能力や才能を信じて。きっと壁は乗り越えられるよ」と。
10年前の自分からは、今の自分はまったく想像できませんでした。このような未来につながっているとは考えもしませんでした。自分にできることを一つひとつやってきて、自分の可能性をあきらめず、本当に良かったと思います。