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2024.07.04

コラム

 

発達障害(ASD・ADHD)人材がAI分野で活躍できる可能性|拡大を続けるAI市場

ニューロダイバーシティという言葉をご存じでしょうか?ニューロダイバーシティとは、「neurological(神経学的な)」と「diversity(多様性)」を組み合わせた言葉です。脳の発達の偏りや神経伝達に由来して発生するさまざまな特性の違いを、「機能的な多様性と捉え相互に尊重しよう」という概念です。

ASDやADHDなど発達障害の傾向も神経発達の自然な一形態であり、社会で活躍するための強みになり得ると考えられています。特にAIをはじめとしたIT分野と発達障害の親和性の高さが注目を集めており、発達障害人材の開拓は企業の成長戦略の一つに据えられています。この記事では、AIと発達障害の親和性やニューロダイバーシティの考え方などを解説します。

発達障害者(ASD、ADHD)のコミュニケーションの特徴|障害特性がプラスに働くことも

発達障害の特性は、AI分野で強みとなる可能性を秘めている

論理的思考や創造力によって社会の進歩に貢献した偉人の中には自閉症傾向のある人物が多く、一例としてエジソンやビル・ゲイツ氏、イーロン・マスク氏が挙げられます。最近の研究で発達障害の特性が数学やパターン認識、記憶など特異な才能と深く関わっている可能性が示され、発達障害人材に注目が集まりました。

アメリカの経営学誌は、ニューロダイバースなチームはそうでないチームよりも約30%高い効率性を実現した、と報告。Microsoftは、ニューロダイバーシティに特化した採用プログラムを設計し、大学の専門課程を修了した発達障害人材を5年間で170人雇用しました。主力製品の開発で成果を挙げており、発達障害人材の戦力化が進んでいます。

日本国内に目を向けると、発達障害人材の戦力化には雇用現場の経験値不足といった課題が残されています。野村総合研究所が2021年に実施した調査によると、日本国内で発達障害人材の未活躍による経済損失額は推計2.3兆円と推計されました。しかし、発達障害をIT業務で採用し、成果を上げる事例は着実に増えています。「富士ソフト企画株式会社」では、特例子会社での収益獲得を実現し、現在では精神障害のある社員が半数以上を占めているそうです。また「グリービジネスオペレーションズ株式会社」では、音声文字起こしやPDF作成などの業務に発達障害人材を配置していましたが、高いパフォーマンスが評判となり、現在ではデバッグや画像加工など250種類の業務で発達障害人材が活躍しています。

では、発達障害のどのような特性が強みになり得るのか、ASDとADHD各々のケースで見ていきましょう。

ASDの傾向がある方の特性

ASDの方はコミュニケーションに困難を感じやすい傾向にありますが、その一方、下記のような特性をAI分野で活かせる可能性があります。

●数学的思考
●ロジカルシンキング
●パターン認識
●限定された興味・こだわりの強さ
●興味関心事に対する高い集中力・記憶力
●規範意識の高さ

規則性や法則性に則ったプログラミングの世界では、ASDの方に見られる「規範意識の高さ」が有利にはたらくでしょう。ASDの特性とAIエンジニアに求められるスキルは共通項が多く、数学的思考やロジカルシンキングなどがそれに当てはまります。また、こだわりの強さや集中力の高さは、AIモデルの精度向上などに役立つでしょう。

ただ有識者アンケートでは、「AIが一般化する時代において、求められる能力」という設問に対し、「コミュニケーション能力等の人間的能力」という回答が74.1%を占めました。また、ASDの方は集中力が高じて過集中を招く可能性があります。そのため、コミュニケーションスキルや集中力のコントロール方法を身につけることによって、活躍の幅が広がるでしょう。

ADHDの傾向がある方の特性

ADHDの特性として「注意不足」や「落ち着きのなさ」などが挙げられますが、以下のような特性を発揮できる可能性があります。

●豊かなクリエイティビティ・発想力
●好奇心・チャレンジ精神
●行動力
●興味関心事に対する高い集中力
●優れた視覚や色彩感覚

ADHDの方がAI分野に興味関心をもった場合、持ち前の集中力を活かして知識を吸収し、スピーディーにコーディングを進められる可能性があります。また、視覚に優れている方は、視覚情報の認識能力を活かしてデバッグを担ったり、色彩感覚を発揮してAIデザイン領域で活躍したりするケースも考えられるでしょう。ASDと同様、ADHDの方もコミュニケーションスキルや過集中に課題を感じる場合がありますが、適切に対処することで専門性の向上をめざせます。

ただし、特性やそのあらわれ方には個人差があり、まずは自身の特性を把握することが大切です。また、発達障害には「興味のないことに集中できない」という傾向が見られるため、AI分野に興味を抱けるかどうかが重要なポイントです。

先端IT領域で注目される「ニューロダイバーシティ」という考え方

ニューロダイバーシティは、一人ひとりの特性の違いを多様性として、社会で活かしていこうという考え方です。発達障害の特性も神経多様性として尊重し、障害の有無に関わらず共にはたらける社会を築こうという思想でもあります。2018年、精神障害のある人が障害者雇用義務の対象に加えられ、ニューロダイバーシティは企業の社会的責任という意味合いを帯びていました。

しかし近年、IT業界では発達障害人材の雇用が社会的責任から企業戦略へと移行しつつあります。自閉症人材の高いパフォーマンスによって、ソフトウェアテストコンサルティング業を成功に導いたデンマーク企業の事例などが話題を呼び、MicrosoftやIBMなど世界的IT企業がニューロダイバーシティへの取り組みを強化。発達障害とIT分野の親和性が注目を集めています。

Neuro Diveでは、発達障害がある方のポジティブな側面に着目し、専門スキルの醸成によってイノベーションに貢献する発達障害人材の育成を進めています。ニューロダイバーシティを実現するには、個々の能力発揮のみならず、従来型雇用枠を超えた「はたらくフィールド」の開発が必要です。

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ニューロダイバーシティと発達障害、就労支援による活躍機会の創出に向けて

最新ツールや市場動向から読み解くAIの未来

AIは「Artificial Intelligence」の略称で、日本語では「人工知能」と訳されます。AIについて「大量の知識データに対して、高度な推論を的確に行うことをめざしたもの」「人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術」などの認識が示されていますが、一意的な定義はありません。なぜAIの定義を定めるのが難しいのでしょうか?それは、AIが再現しようとしている人間の「知能」や「知性」そのものの定義が一意に決められないためです。

今やAIは、ディープラーニング革命と呼ばれる技術革新により、自動翻訳や自動運転、画像生成など知的タスクを遂行するフェーズに達しています。ディープラーニング革命をもたらしたのは、機械学習と呼ばれる技術です。機械学習とは、コンピュータがビッグデータから規則性を見出し、自ら予測・判断を行う分析手法のこと。機械学習によって高度化を続けるAIは、いずれ「人間の知能」を解明するだろうと推測されています。

画期的なAIツールが続々と誕生

AIについて押さえておきたいキーワードとして、マルチモーダルAIや生成AI、エッジAIなどが挙げられます。

マルチモーダルAIとはテキストや画像など複数の情報をまとめて処理できるAIのこと。2023年にGoogleが開発したマルチモーダルAI「Gemini」は、「人間の専門家を超えた初のAIモデル」と称賛されました。

生成AIは文章・画像・音声・動画という4種類に分類されますが、各ジャンルとも革新的な進化を遂げています。たとえば動画生成AIジャンルでは、AIモデルやAIタレントを活用する日本企業が2022年からサービスをスタート。AIタレントを起用したTVCMが話題を呼びました。

動画生成AIの開発競争は過熱の一途をたどっています。2024年、OpenAI社は高度な言語理解能力によって指示内容に忠実な動画を作成する「Sora」を発表。続いてGoogleは、高機能生成AIモデル「Gemini」を搭載した動画作成アプリ「Google Vids」をリリースしました。

エッジAIは、エッジデバイスと呼ばれる端末にAIを搭載し、クラウドを経由しなくても端末自体が分析・判断できる技術です。クラウドAIと比較すると処理速度が格段にスピードアップするため、瞬時の判断が求められる自動運転などに応用されています。AIが洗浄力や水量を自動調整する洗濯機や、おすすめレシピを提案してくれる自動調理鍋など、スマート家電への応用も進んでおり、エッジAIはますます身近な存在となるでしょう。 2024年にAppleが発表した「Apple Intelligence」もエッジAIのパフォーマンスをフルに活かしており、モバイル端末上で画像生成AIや対話型AI「ChatGPT」を使用できます。電子メールの本文を自動で作成したり、自分が撮影した写真で絵文字をつくったり、生成AIを日常生活のパートナーとして活用できそうです。

活発な投資により拡大を続けるAI市場

ビジネスにおけるAI活用は、効率化などの業務領域からマーケティングなどのビジネス領域へと拡大しています。多くの企業が新規導入を考えている技術としてAI・機械学習と生成AIを挙げており、投資意欲も上昇。特に、画像認識や音声認識において積極的な投資の動きが見られます。業界別に見ると、ヘルスケアや小売、ハイテク関連の業界が、生成AIの投資に注力しているようです。

2024年、Microsoftは日本で約4,400億円の投資を行うと発表しており、大規模な営業活動を展開する見込みです。さらに、OpenAIは日本法人の設立を発表し、国内市場向けに日本語に特化したGPT-4(マルチモーダルAI)の提供を開始しました。これらの動きによって、AI市場の成長が加速するものと思われます。

AI導入・活用にあたって企業が直面する課題

IT専門調査会社の報告によると、AIシステムを導入している企業の割合は2023年度時点で72.4%に達しましたが、DXの取り組み期間が3年未満の企業も54.8%という結果に。これからAIを導入するという後発企業も少なくありません。

しかし、AIを導入する企業には下記のような課題がついて回ります。

●導入プロセスのスピードアップ
●品質の担保
●セキュリティ問題・倫理問題への対策
●情報感度の向上
●人材の確保

各々について説明します。

●導入プロセスのスピードアップ

AI導入によって成長スピードを加速させる企業が増加する中、後れをとった企業は競争力を失う恐れがあります。AIを導入する企業は、業務課題の整理と課題解決に向けた戦略の立案、リソースの確保というプロセスを急ピッチで行う必要があるでしょう。

●品質の担保

AI導入前に、品質を担保する方法についても検討しなければなりません。AI分析結果の精度を向上するには、使用するデータの質と量を確保すると共に、AIモデルの経年劣化を防止する必要があります。常にAIモデルの精度を監視し、定期的にチューニングする体制が必要です。データ収集に偏りが出る「データバイアス」も回避しなければなりません。過去には、医療現場のAIが特定の人種に配慮したり、採用プロセスのAIが男性を優遇したり、生成結果に偏りのある事例が発生し倫理問題に発展しました。

●セキュリティ問題・倫理問題への対策

AIリスクは、誤情報を生成するハルシネーションや機密情報の漏えいなど多岐にわたります。セキュリティが確保された運用に向けて、AI運用に関する法とルールの理解やセキュリティ対策の徹底が必要です。

●情報感度の向上

AI分野では常に新しいアルゴリズムやツールが誕生しており、最新動向をキャッチアップする先進性が求められます。AIの活用目的が課題解決であれソリューション創造であれ、最新技術を組み合わせて新たな策を見出すには、既存の枠にとらわれない柔軟な発想力が必要となるでしょう。

●人材の確保

AIの効果的な運用には高度な専門知識が不可欠であり、人材の確保が最重要課題となっています。社内育成にはコストと時間がかかり、外部から採用しようにもAI人材の確保は容易ではありません。2020年時点で4万4,000人だったAI人材の需要は、2025年には8万8,000人、2030年には12万4,000人にまで拡大する可能性があります。需要拡大にともない人材不足はますます深刻化するでしょう。

発達障害人材がAI導入の企業課題を解決に導く?

AI導入のプロセスにはスピード感が求められますが、高い決断力をもつ傾向にあるADHDの方や、忖度せずに意見を述べられるASDの方が、意思決定を促せる場合があるでしょう。

AIは、アイデア次第でソリューションの源泉となり得ます。たとえば、AIがユーザーの好みや食事内容に応じて最適なワインを提案してくれる「AIソムリエ」など、ユニークな新ビジネスも続々と誕生。発想力が求められるAI活用シーンでは、ADHDの特性のひとつであるクリエイティビティが役立つ可能性があります。

またAIの活用には、予測不能な事態に対処し、リスクを恐れず新たなアプローチを試みる姿勢が大切です。ADHDの人はチャレンジ精神に富む傾向があり、不確実な状況の中でも柔軟な対応策を講じられる場合があります。また、機密情報の漏えいなどのリスクを回避し、信頼度の高いAIシステムを確立するには、ASDの特性である規範意識の高さが役立つ可能性があるでしょう。

AI導入における最大の課題は人材不足ですが、「その解決には発達障害人材の活用が有効である」と有識者は指摘しており、発達障害人材の獲得に向けた動きが加速しています。オムロングループでは「異能人財採用プロジェクト」を通じ、発達障害人材を積極的に採用。また、すでに発達障害人材がDX推進を担っている日揮ホールディングスは、2026年までにエンジニア関連の障害者雇用枠を6割拡大すると発表しています。

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AIスキルの習得によってめざせる仕事・職種

社会的要請の高いAI分野であれば、社会に貢献しているというやりがいを実感しながらはたらけることでしょう。AIスキル習得によってめざせる仕事・職種は、以下の図を参考にしてください。

AIを構築する仕事・AIを活用する仕事

めざす職種は、「AIとどのように関わり、何を実現したいか」によって変わってくるでしょう。

【まずはチェック】あなたはAI人材に向いているかも?

「AI分野に興味はあるが、自分に適性があるだろうか」と思っている方は、次のチェックリストを試してみてください。複数の項目に当てはまる方は、AI人材のポテンシャルを備えているかもしれません。

AI人材に向いているかも?チェックリスト

□ プログラミングに興味がある
□ 理数系が得意
□ 論理的に考える傾向がある
□ 知的好奇心が強い
□ 一人でコツコツ取り組むのが好き
□ 最新のテクノロジーに興味・関心がある

AI分野ではさまざまなプログラミング言語が用いられていますが、機械学習向けライブラリが充実したPythonが主要言語です。専門的な領域で使いこなすには高度な知識・スキルが求められますが、プログラミングに興味のある方にとってはやりがいを感じられるでしょう。課題解決までの道筋を順序立てて考えられる論理的思考と、データ分析に不可欠な数学知識も、AI分野で有利にはたらきます。

またトライアルアンドエラーを繰り返しながらAIモデルを作成する工程では、さまざまな手法を試す好奇心や地道に取り組む姿勢が求められるでしょう。日進月歩のAI分野では、常に最新情報をキャッチするアンテナ力も必要です。

関連記事:『発達障害のある人がエンジニアに向いている理由とは?就職に必要なスキル・知識を解説

AIスキルとビジネス視点を習得できる、Neuro Diveならではの学び

Neuro DiveのAI・機械学習領域ではPythonやR、統計的理解をもとに機械学習モデルを生成し、ビジネスの意思決定に欠かせない分析・予測を行います。また実践力が身につくよう、データを活用しながらポートフォリオを作成。ビジネスシーンで通用するポートフォリオをめざし、ITアドバイザーが随時フィードバックします。

Neuro Diveでは、ビジネスニーズの高い人材をめざし、先端ITスキルと共にビジネススキルの習得をサポート。エンジニアの基礎体力というべきコミュニケーションスキルや健康管理能力、メンタルコントロール法を身につけられます。

発達障害の特性は、AI人材として輝く未来を創る

IT業界では、発達障害の特性とAIとの親和性が注目されています。深刻なAI人材不足が叫ばれる日本でも、先端ITスキルをもつ発達障害人材の雇用促進が、社会課題解決の糸口になるでしょう。発達障害人材は、自身の特性にマッチした環境や周囲の配慮を得られれば、類まれな能力を発揮できる可能性があります。発達障害のある方自身にも、個々の違いを多様性と捉えるニューロダイバーシティの考え方が求められます。障害を「壁」と捉えず、未知の領域へ踏み出すチャレンジ精神をもつことで、ハイキャリアへの道が開けるでしょう。

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