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2024.07.29

コラム

 

先端ITとは?従来型ITとの違いやIT業界の動向、今後の展望を解説

IT(情報技術)は、半世紀の間に目覚ましい進歩を遂げてきました。1990年代にインターネットの商用利用が可能になると、ITは社会に広く浸透。「IT革命」が流行語大賞となった2000年以降は、モバイル端末の普及によって個人の生活に深く入り込みました。そして現在、先端ITはAIやIoTの進化に伴い、あらゆる領域に拡大しています。

ビジネス界における先端ITは、業務効率化やサイバーセキュリティ、データマーケティングなど、幅広い領域を支えています。先端ITを活用して事業を拡大する企業も増え、先端IT人材のニーズは急増。質の高い先端IT人材が「大幅に不足している」と回答した企業は、2021年度時点の30.5%から2022年度には51.7%にまで増加しました。

現代社会になくてはならない存在になっている先端ITとはどのような技術なのでしょうか。また従来型ITとはどのような違いがあるのか、詳しく解説します。

先端ITとは?従来型ITとの違いやIT業界の動向、今後の展望を解説

先端ITとは

先端ITとは、インターネットやコンピュータ、ソフトウェアなど、通信ネットワークに革新を起こした最新テクノロジーのこと。経済産業省の資料によると、「先端」に含まれる技術は「データサイエンス、AI・人工知能、IoT、デジタルビジネス/X-Tech 、アジャイル開発/DevOps、AR/VR、ブロックチェーン、自動運転MaaS、5G、その他先端領域」とされています。

民主化が進む先端IT

先端ITは生活のあらゆるものに浸透しています。一例を取り上げましょう。

データサイエンス

データから価値ある情報を抽出し意思決定につなげる「データサイエンス」は、身近なアプリケーションにも応用されています。たとえば、ユーザーの嗜好を考慮して商品やサービスを提案するレコメンドシステムや、交通・渋滞情報をリアルタイムで分析し最適なルートを表示する交通情報アプリなど。ビジネス分野では、データサイエンティストがAIを活用しながらデータを洞見し、企業の意思決定をサポートしています。

AI・人工知能

AI・人工知能は先端ITの中でもニーズの高い領域です。ユーザー数23億人超の「ChatGPT」をはじめ、生成AIの進化と普及のスピードは目覚ましく、ニュース記事や建築デザイン案などの作成も自動化されつつあります。AIが生成する画像やイラストも完成度が高く、誰もがクリエイターになれる時代。ウェアラブルデバイスへの応用も進んでおり、ユーザーの求めに応じてAIが情報検索や翻訳などのタスクをこなしてくれます。

サイバーセキュリティ

サイバー攻撃に対抗する技術がサイバーセキュリティです。標的型攻撃による情報の窃取や、ランサムウェア攻撃による身代金要求など、さまざまな脅威に対抗して、AIを活用した自己学習型の異常検知技術も登場。機械学習アルゴリズムがシステムの平常状態を把握し、異常パターンを高精度で発見するだけでなく、未知の脅威も検知できるようになりました。ビジネス分野では、セキュリティに特化したエンジニアの需要が高まっています。

AR/VR

デジタル技術によって仮想現実をつくり出すAR/VRは、エンターテイメントや医療、教育などの分野で応用が進んでいます。メタバース上で買物やヘルスケア、スキルアップ、仕事などさまざまな体験が可能になりました。発達障害の特性を体験できるVRなど、体性感覚を表現するデバイスも注目されました。また、実在するものや環境を仮想現実上で再現する「デジタルツイン」も、さまざまな可能性を秘めています。

量子コンピューティング

社会実装に向けて研究開発が進められている量子コンピューティングは、量子力学の現象を利用して難解な問題を解決する技術です。2024年、量子コンピューティングによって新薬開発などを進めるために、国立がん研究センター東病院らが共同コンソーシアム設立を発表するなど、産業応用に向けた動きが加速。物流・運送業界の「2024年問題」に対応するため、量子アニーリングマシンを活用したシステムを導入し、運行・配送計画の高速化を実現している運送事業者もあります。

先端IT人材がテクノロジーによってビジネスに貢献できること

ビジネス界に先端ITが浸透するには、先端IT人材が不可欠です。経済産業省の資料によると、先端IT人材は「AIやビッグデータ、IoT等、第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手として、付加価値の創出や革新的な効率化等により生産性向上等に寄与できる IT人材」と定義されています。先端IT人材は、主に下記のような課題の解決を担っています。

先端IT人材が担う課題例

  • 業務プロセスの可視化と改善
  • 顧客満足度の向上
  • 新たなビジネスモデルの構築

先端IT人材はさまざまな技術を活用し業務効率化を進めています。たとえば、ソフトウェアロボット技術「RPA」による単純作業の自動化、AIによる文章やデザインの自動生成などが挙げられます。また、IoT機器を介して現状把握や遠隔操作が可能となる技術「IoT」を導入し、製造や物流の大幅な作業時間短縮を実現している事例も少なくありません。

先端ITを活用して在庫管理や物流、広報などのコストを削減することにより、ユーザーに利益を還元できます。また、ビッグデータ分析などを通じて顧客ニーズと市場動向を先読みし、商品やサービスの付加価値向上も可能です。

また先端IT人材は、アイディア次第で新事業開拓の旗手となり得ます。たとえば、Amazonは元々オンライン書店でしたが、2006年からクラウドコンピューティングサービス「AWS」の提供を開始。2023年にはプライマリケア企業「One Medical」を買収しオンラインの遠隔診療サービスを提供するなど、先端ITを駆使して事業を拡大しています。

近年、「AI経営革新」というビジネスワードが注目を集めました。企業経営の中枢にAIを実装し、経営に関わる情報分析や意思決定、モチベーションサーベイ、組織マネジメントの最適化を図る取り組みです。先端IT人材は、ビジネスプロセスを根本からアップデートし、競争力向上に貢献できます。

先端ITと従来型ITとの違いは何なのか

従来型ITとは、クラウドコンピューティングなどの最新技術が台頭する以前、社会に広く浸透していた技術を指します。そして「従来型IT人材」とは、主にシステムの運用や保守、請負開発を担う人材を指す用語です。

ここでは、先端IT人材との違いと、従来型ITとされる技術について見ていきましょう。

先端IT人材と従来型IT人材の違い

先端IT非従事者のことを「従来型IT人材」と呼びます。先端IT人材と従来型IT人材の違いを表にまとめました。

先端IT人材 従来型IT人材
定義 AIや機械学習、IoTなど、最先端技術を習得し、第4次産業革命に対応できる人材 ITシステムの運用保守や請負開発を担える人材
求められるスキル例 ●最先端ITを活用したモデル開発
●サイバーセキュリティやクラウドセキュリティスキル
●ビジネス課題の解決能力
●要求に応じたプログラミングスキル
●システムやデータベースの運用管理

代表的な従来型ITについて

従来型ITには、下記のようなテクノロジーが含まれます。

メインフレーム(汎用コンピュータ)

メインフレームとは基幹システムなどに用いられる大型コンピュータのこと。1980年代頃にパーソナルコンピュータが普及するまで、メインフレームが唯一のコンピュータ製品でした。大型の本体と操作用の端末を回線でつなぎ、複数人で共有する仕様です。信頼性と安定性が高く、現在も大規模なデータ処理や高度な計算処理が必要な場面で活用されています。

オンプレミス型インフラストラクチャ

インフラストラクチャとは、IT環境の運用や管理に必要なコンポーネントのこと。従来型インフラストラクチャは、サーバーやストレージなどを統合したハードウェアとソフトウェアで構成されています。一般的にはこれらのコンポーネントを企業の構内で運用・管理しますが、セットアップに多くの電力と稼働費用を要することがあります。

従来型ネットワーク

遠く離れた拠点間をつなぐ広域通信網「WAN」や「VPN」が通信に用いられてきましたが、クラウドサービスの利用拡大やテレワークの浸透などによって、インターネット回線がひっ迫する事態が起こりました。社内の通信を集約する自社データセンターはボトルネックとなり得るため、クラウド時代に適したネットワークシステムにアップデートしつつあります。SaaSやPaaS、IaaS、5Gネットワーク、SD-WANなど新たなネットワークサービスが活用されるようになりました。

先端IT人材に求められるテクニカルスキル例

先端ITにはさまざまなカテゴリがあり、先端IT人材はどの領域を選択するかによって求められるスキルや扱う技術が異なります。また、先端IT人材はビジネスの上流工程に関わることが多く、テクニカルスキルのみならずビジネススキルが求められるでしょう。

先端ITの主なカテゴリ

先端ITのテクニカルスキルセット

先端ITの主なカテゴリは以下の通りです。各々に求められるスキルと使われている技術やツールについて表にまとめました。

カテゴリ 必要なスキル例 使用技術・ツール・ サービス例
プログラミングとソフトウェア開発 ●ソフトウェアエンジニアリング
●データ構造
●アルゴリズム
●GitHub
●React
●Rust
データサイエンスとAI(機械学習) ●基礎数学
●データ加工
●データ解析
●Azure AI Studio
●Vertex AI Studio
●Amazon SageMaker
クラウドコンピューティング ●クラウド環境の構築・運用
●プログラミング
●セキュリティ対策
●Amazon Web Services(AWS)
●Google Cloud Platform
●SaaS
サイバーセキュリティ ●セキュアシステム設計
●脆弱性診断
●セキュリティシステムの保守運用
●ESET PROTECT
●Hybrid Mesh Firewall
●Wireshark
データベース管理 ●システム開発
●データベース技術
●セキュリティ対策
●NoSQL
●Saas
●ERデータモデリングツール
ネットワークとインフラストラクチャ ●インフラ設計
●プログラミング
●セキュリティ対策
●DePIN(分散型物理インフラネットワーク)
●5G/6G
●SDI(Software-Defined Infrastructure)
Web3 ●スマートコントラクトの開発
●ブロックチェーンの開発
●NFTの開発
●TypeScript
●React
●Node.js
エッジコンピューティング ●IoTの導入・開発
●データ分析
●プログラミング
●バンプ技術
●EdgeOps
●組み込みソフトウェア
AR/VR ●ゲームエンジンの操作
●動画撮影・編集
●プログラミング
●ロケーションベースAR
●ビジョンベースAR
●IDE
IoT ●ネットワークシステム構築
●アプリケーション開発
●セキュリティ対策
●JavaScript
●Python
●5G/6G
ブロックチェーン ●ブロックチェーン技術
●プログラミング
●スマートコントラクトの開発
●C言語
●JavaScript
●Solidity
量子コンピューティング ●量子力学
●量子アルゴリズム
●ソフトウェア開発
●Google Cirq
●NVIDIA cuQuantum
●IBM Quantum

IT業界の現状と未来

先端ITと従来型ITの現状と、今後の展望を見ていきましょう。

現在、先端ITと従来型ITは補完関係を構築

先端ITのニーズが高まっているものの、従事者数の比率を見ると先端IT人材よりも従来型IT人材が大きく上回っています。2020年にIT政策実施機関が公表した調査結果によると、2019年時点で先端IT人材11.8%、従来型IT人材88.2%という比率でした。

現状、従来型ITと先端ITは補完的な関係にあるといえます。従来型ITは長年にわたって基幹システムなど企業の中枢をなしてきた技術であり、信頼性と安定性を獲得してきました。しかし、既存の従来型ITを現在のニーズに合わせて変革するプロセスや、従来型ITから先端ITへの移行が段階的に進められています。

一方、先端ITの導入は加速度的に拡大。特にAIは、画像認識を活用したセキュリティや不良品検出、音声認識による窓口業務の自動化など、ソリューションの事例が数多くある領域です。ただ、NPO法人が実施したITスキル診断の結果によると、ソフトウェア開発やシステムアーキテクトと比較して、AIやエッジに関わるエンジニアのスキルは未だ低い傾向にあります。

先端ITと従来型ITの未来

今後、従来型ITの多くが老朽化した「レガシーシステム」としてDXの障害になるといわれています。信頼性と安定性を確保する目的で一部の従来型ITは存続するものと思われますが、既存システムのクラウド化が進み、従来型IT人材の仕事内容も変革を迫られるでしょう。

先端IT領域では、今後、小さなサービスを組み合わせるソフトウェア開発手法「マイクロサービスアーキテクチャ」が普及する見込みです。また、「サーバーレスコンピューティング」の進化によって、エンジニアはサーバーの運用管理から解放される可能性があります。これらのアーキテクチャを支えるセキュリティも進化の一途をたどるでしょう。

セキュリティ強化に伴って、「エッジコンピューティング」が躍進を遂げる可能性が高まります。また2030年頃に本格的な実用が始まるといわれる「量子コンピューティング」や、2024年から2032年にかけて39.2%の市場成長率が見込まれる「XR(拡張現実)」がDX時代の寵児となるかもしれません。

経済産業省は、このようなITイノベーションによって2030年には先端IT人材が54.5万人不足し、従来型人材が9.7万人余剰するという試算を発表。さらに、先端IT人材の獲得に失敗しデジタル競争に後れをとっている企業は、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性がある、と示唆しています。

先端ITの導入によりDXを推進する企業例

「株式会社LIXIL」は、建築材料・住宅設備機器の開発・提供を行う大手企業として業界をリードしてきましたが、より機動的な組織を目指してデジタルトランスフォーメーションロードマップを策定。代表的なDX事例として、AR/VRを活用したバーチャルショールームや、AI音声認識を活用したオンラインショールームが挙げられます。これらの取り組みにより、販売サイクルの短縮やユーザーエクスペリエンスの向上を実現。

また「デジタルの民主化」をスローガンに、全役員がノーコードアプリ開発プラットフォーム「Google AppSheet」研修を受講し、自ら作成したアプリで業務効率化を図っています。少子高齢化により新設住宅着工件数が縮小する中、先端ITによる事業変革に生き残り戦略を見出しているようです。

質の高い先端IT人材の活用が、競争力向上のカギとなる

従来型ITは長年、信頼性と安定性のあるシステムとして日本企業の根幹を支えてきました。そして今、先端ITは新たな企業価値の創出やスピーディーな市場対応を可能にする技術として、企業の成長に不可欠なテクノロジーです。日本国内では、先端ITの開発スピードに対し、企業の取り組みが追い付いていない状況が懸念されています。企業成長を妨げる最大のボトルネックは人材問題であり、先端IT人材の確保が最優先課題です。いかに質の高い先端IT人材を活用できるかが、競争力向上のカギとなるでしょう。

先端IT人材への成長を後押しするNeuro Dive

就労移行支援事業所「Neuro Dive」では、DX時代を支える先端IT人材を育成。2019年の秋葉原開所以降、全国に事業所を拡大し、利用者の就職実績も年々増え続けています。

福祉サービスを活用できる就労移行支援事業所

「Neuro Dive」は、福祉サービスを活用しながら先端ITスキルを習得できる就労移行支援事業所です。制度上限は2年間ですが、早ければ約1年間で先端ITスキルと職業準備性を身につけ、先端IT分野での就労を目指せます。卒業生の約8割は、データ分析やシステム開発など高い専門性を活かす仕事に就いています。

AIやデータサイエンス、RPAなどを習得し先端IT分野で活躍

質の高い独自プログラムと現役データサイエンティストによる直接指導で、AIや機械学習、データサイエンス、RPAなどのスキルを実践的に学べます。先端ITスキルを発揮するためには、基礎的能力となる職業準備性も必要です。企業の課題解決に貢献できるスキルセットを身につけ、ビジネスニーズの高い人材を目指します。