ASDのある人は、生まれつきの特性により苦手なことが多く、社会生活において困りごとを抱えているケースも少なくありません。
本記事では、ASDのある人が苦手なことを紹介しつつ、仕事における強みや得意なことを解説します。ASDのある人に向いている仕事や、苦手とうまく付き合う方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次
ASDとは?
ASDとは「Autism Spectrum Disorder」の略称であり、自閉スペクトラム症のことです。従来「アスペルガー症候群」と「自閉症」はそれぞれ別々の症状として捉えられていましたが、これらを連続したもの(スペクトラム)として捉えるという考えのもと、現在では「自閉スペクトラム症」と呼ばれるようになりました。
ASDは発達障害の1つであり、脳機能の偏りにより、物事の受け取り方や行動に一定のパターンが見られます。
ASDのある人が苦手なこと
ASDのある人は、以下のようなことを苦手に感じる場合が多いでしょう。
曖昧な指示
ASDのある人は、言葉の裏にある感情や真意を読み取ることが苦手です。そのため、上司や先輩から曖昧な指示を出されると、思い込みや勘違いから誤った行動をとってしまう傾向があります。
これは、外部の状況を正確に認識する「知覚統合」や、複数の情報をまとめて全体像を捉える「中枢性統合」などの認知機能にズレが生じることに起因します。
イレギュラーな事態
ASDのある人は、臨機応変な対応が苦手です。変化を嫌い、常に同じ状態であることを好む欲求が強いため、イレギュラーな事態が起こると混乱してしまう人が多いでしょう。こうした特性からASDのある人はこだわりが強く、自分が決めた手順ややり方を守ろうとする傾向があります。
また、前述の中枢性統合のズレも、臨機応変な対応が苦手となる要因の1つです。
気持ちの切り替え
ASDのある人は一度に複数の情報を処理することが苦手な反面、1つの物事に強く集中する傾向があります。これ自体は「好きなことにとことん打ち込める」という長所にもなる反面、「気持ちの切り替えが苦手」「オン・オフを切り替えられない」という特性として表れることもあるでしょう。
また、こだわりが強く完璧主義な特性も、気持ちの切り替えが苦手となる要因の1つです。
スケジュールや時間の管理
ASDのある人は物事の全体像を把握することが苦手なため、スケジュールや時間の管理が不得意な傾向があります。「身支度にはこれくらい時間がかかるだろう」といった時間感覚が曖昧で、遅刻を繰り返してしまいがちです。
光や音、においなどの刺激
ASDのある人は感覚過敏なことが多く、光や音、においなどの刺激を苦手とする傾向があります。例えば、以下のような刺激に対して、強いストレスを感じることが多いでしょう。
・繁華街の雑踏
・いろいろな料理のにおいが混ざった場所
・液晶画面から発せられる光
・エアコンの音
・チクチクする素材の衣類
なお、ASDのある人のなかには刺激に対して感覚が鈍い「感覚鈍麻」の特性を持つ人や、特定の刺激を強く好む人もいます。
人とのコミュニケーション
ASDのある人は、相手の気持ちを想像することが苦手で、人とのコミュニケーションが不得意な傾向があります。言葉の裏にある意図やニュアンスの違いを理解できないことが多く、職場や学校でのコミュニケーションに苦労するケースも少なくありません。
また、何気なく発した言葉で相手を傷つけたり、怒らせたりしてしまい、友人関係や信頼関係の構築がうまくいかないこともあるでしょう。
空気を読むこと
ASDのある人は声のトーンやジェスチャー、視線などの非言語コミュニケーションを理解することが難しい傾向があります。そのため、ASDのある人は空気を読んで立ち回ることが苦手で、その場に合わない振る舞いをしてしまうケースも少なくありません。
症状が比較的軽度の人は周囲に合わせることもできますが、一生懸命になるあまりストレスを抱えてしまいがちです。
仕事におけるASDの強み・得意なこと
ASDのある人には苦手なこともありますが、特性をうまく活用すれば、仕事における「強み」に変えられます。
例えば、ASDのある人は1つの物事に集中して取り組むことが得意なため、興味関心のある分野を仕事にすれば高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。また、決められたルールやマニュアル通りに行動することも得意なので、ルーティン業務にも向いています。こだわりの強さを活かして、正確さが求められる作業に従事するのもおすすめです。
ASDのある人は論理的思考力も高い傾向があり、ロジックに従うことが重要な仕事も活躍しやすい分野です。
ASDのある人に向いている仕事
ここでは、ASDのある人に向いている職業と、それぞれのおすすめポイントを紹介します。
経理事務
経理事務は、企業の会計や財務などを管理する仕事です。規則に基づくルーティンワークが多いため、ルール通りに行動することが得意なASDのある人に向いています。数字を扱う仕事なので、きちょうめんさも活かせるでしょう。
研究職
1つの分野をとことん突き詰める研究職は、好きなことに高い集中力を発揮するというASDの特性にマッチします。これだと思える分野やテーマに出会えれば、特性を活かして研究に没頭できるでしょう。
工場作業員
工場での業務はルーティンワークが多く、決められた手順に従って正確に作業することが大切です。臨機応変な対応を求められることは少なく、指示内容も明確な場合が大半なので、ASDのある人に適しています。
プログラマー
プログラマーの仕事は、プログラミング言語を用いてシステムやアプリなどを開発することです。プログラマーには高い集中力とこだわりの強さ、論理的思考力が求められるため、ASDの特性を活かしやすいといえるでしょう。
ゲームテスター
ゲームテスターとは、開発段階のゲームをプレーし、バグや不具合の有無などをチェックする仕事です。同じゲームを何度も繰り返し検証する必要があるため、集中力や注意力が長続きしやすい特性の人に適しています。
Webデザイナー
Webデザイナーの仕事は、クライアントの要望に応じて、魅力的なWebサイトをデザインすることです。ASDのある人は視覚情報の処理が得意な傾向があり、細部までこだわりを持てるため、Webデザイナーのようなクリエイティブな仕事にも向いています。
データアナリスト
データアナリストは、収集したデータを分析し、企業の意思決定をサポートする仕事です。細かな数字を扱い、仮説の立案と分析を行います。同じ作業を何度も繰り返すため、持ち前の集中力とこだわりの強さを発揮しやすいでしょう。
AIエンジニア
AIエンジニアは、AI(人工知能)を活用したシステムを開発したり、データを解析したりする仕事です。機械学習やディープラーニングを活用し、ニーズに合わせたAIを構築することが求められます。
例えば、ユーザーの要求に応じて文章や画像などを生成する「生成AI」を開発できるエンジニアなどに注目が集まっています。
プログラマーと同じく、こだわりの強さや論理的思考力などの特性を活かせるでしょう。
データサイエンティスト
データサイエンティストとは、膨大な量のデータを分析し、企業の商品開発や業務効率化などのビジネス課題の解消を支援する仕事です。データアナリストと共通する部分も多いですが、より高度なデータ解析が求められ、AIや機械学習の知識が必要とされます。
ASDの高い集中力を活かせば、データを細部まで分析し、ビジネスの成長をサポートすることが可能です。
RPAエンジニア
RPAとは「Robotic Process Automation」(ソフトウェアロボットによる業務自動化)の略称です。人間がパソコンで行う業務を自動化することにより、コスト削減や人手不足の解消につながると期待されています。
RPAエンジニアは、従来手動で行われていた作業をコツコツとRPA化していく必要があるため、ASDの特性を活かしやすいでしょう。
ASDのある人が自分の「苦手」と付き合っていく方法
ここからは、ASDのある人が自分の「苦手」と上手に付き合いながら、社会生活を送るためのコツを紹介します。
自分の特性を理解する
まずは、自分の特性を理解するところから始めてください。自分の得意なこと、不得意なことを明確にして、「強みを活かせる仕事」や「苦手なことをあまりしなくてもよい仕事」を選ぶことが大切です。
具体的な指示内容を確認する
曖昧な指示をされて困ったときは、相手に具体的な内容を確認しましょう。どのような手順で進めるのか、いつまでに終わらせるのかといったポイントを明確にすることで、業務を進めやすくなります。
ノイズキャンセリング機能のあるイヤホンを使用する
感覚過敏があり、職場の音や話し声などが気になる場合は、ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンがおすすめです。ただし、仕事中に音楽を聴いてサボっていると誤解されないよう、あらかじめ周囲の人の理解を得るようにしてください。
自分専用のマニュアルやコミュニケーションのルールを作る
職場で用意されているマニュアルは、発達障害のある人には合わない可能性があります。例えば、ASDの特性がある人には、通常よりも具体的な指示や手順が記載されたマニュアルが適しています。上司や同僚に確認をとりながら業務手順をカスタマイズし、自分だけのマニュアルを作成するとよいでしょう。
また、「相手の話を遮らない」「まずは肯定から入る」など、コミュニケーションのルールを作ることもおすすめです。
支援機関を利用する
生まれつきの特性で困っている場合は、自分だけで対処しようとせず、支援機関を利用することも手段の1つです。専門家に相談することで、無理なく自分らしく、仕事で活躍する方法を見つけやすくなります。発達障害の支援機関は公民問わずいろいろありますが、代表的な機関は以下の通りです。
・発達障害者支援センター
・精神保健福祉センター
・就労移行支援事業所
・地域障害者職業センター など
ASDの特性を強みに変える。先端IT分野で輝くための第一歩
ASDのある人は、曖昧な指示や人とのコミュニケーションなどを苦手とする一方で、興味のあることには高い集中力を発揮し、正確さや論理的思考力が求められる作業を得意としています。ASDのある人に限らず、人間には誰しも得意・不得意があるものです。自分の苦手と得意を把握し、自分らしさを活かせる職業を選ぶとよいでしょう。
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