ADHDの特性による仕事の遅さに悩んでいる人は、原因を理解し、改善したいと考えているのではないでしょうか。 本記事では、ADHDの特性を理解して仕事に向き合って仕事のスピードや効率アップのために実践できる対策や、特性が活かせる仕事選びについて解説します。ADHDのある人が利用できる支援制度も紹介するので、参考にしてください。

目次
ADHDのある人の仕事の遅さは適職選びや対策で改善できる
ADHDのある人は、周りと比較して効率が悪く、仕事が遅いことに悩むことが少なくありません。しかし自身の特性の理解を深め対処法を知ることで、その悩みを克服(軽減)出来るかもしれません。
また、特性を強みに変える適職選びをすれば、能力を存分に活かし、やりがいを感じながらはたらけるでしょう。
ADHDのある人が仕事で抱えている悩みの一例
ADHDのある人が仕事上で抱えている悩みには、どのようなものがあるのでしょうか。悩みの一例を解説します。
注意していても同じミスを繰り返してしまう
事務処理やデータ入力などの作業で、ミスしないように気をつけていても、ADHDの特性である不注意性や衝動的な行動により、同じミスを何度も繰り返してしまうことがあります。
また、やり方にこだわりがあり、周りから改善方法を教えてもらってもなかなかやり方を変えられないという思考の偏りによってミスが生じることもあるでしょう。
業務の優先順位を考えて行動できない
衝動的に行動してしまったり、マルチタスクが苦手で1つの作業をやり切ってからでないとほかの作業ができなかったりすると、優先順位を考えた業務遂行ができない場合があります。
優先順位を考えられないだけでなく、作業中に突然別の作業を依頼されるとパニックになってしまうこともあるでしょう。
整理整頓ができない
ADHDのある人は他の作業に気がいくと、今までやっていたことや、やろうとしていたことを忘れてしまう傾向があります。
その結果、やりかけの状態で別の作業が始まるため、机や身の回りが散らかってしまい、整理整頓ができないと悩む場合があるでしょう。
集中力が続かない
不注意などに関連して、同じ作業に集中し続けることを苦手とする人は、周囲と比べて集中力が続かないと悩むこともあります。
また、ADHDの特性である多動性・衝動性により、他のことに興味が向いてしまい、今進行している作業に集中できなくなるという場合もあるでしょう。
時間の管理が苦手
ADHDのある人は、時間の管理を苦手とする場合があります。ADHDの特性である衝動的に行動してしまうことや、不注意が原因となり、時間を守れず仕事で苦労することも少なくないでしょう。
時間に関しての具体的な悩みは、以下で詳しく解説します。
仕事が遅い理由となる時間に関する悩み
仕事をするためには、時間の管理が重要です。しかし、ADHDのある人は時間の管理が苦手で悩むことも多いのではないでしょうか。具体的な悩みの例をいくつか解説します。
スケジュール管理ができない
ADHDのある人がスケジュール管理できない原因には、衝動性や不注意が関係しています。
衝動性によって目の前のことに集中し過ぎると、スケジュールを立てていてもスケジュール通りの行動ができなくなってしまいます。不注意によるスケジュール忘れや、タスク漏れによるスケジュール管理ミスもあるでしょう。その結果、仕事が遅いと判断される場合があります。
約束の時間に間に合わない
目の前のことに集中すると、次にやることを忘れて、約束の時間に間に合わなくなる場合もあります。その結果、大切なアポイントや会議に遅刻してしまい、要領が悪く、仕事が遅いと思われてしまうでしょう。
作業していると時間を忘れてしまう
ADHDのある人は、目の前の作業に没頭する「過集中」の特性があるため、他の作業を忘れて同じ作業に取り組み続けてしまいます。また、1つの作業に集中するあまり、時間をかけ過ぎることから「仕事が遅い」という印象を持たれたり、上司から指摘を受けたりして悩む場合もあるでしょう。
仕事の遅さへの対策方法
仕事の遅さや、それらに関連するミスを防ぐための対策方法を解説します。できることから実践してみてください。
タイムログによるタスク管理をする
1つの行動にかかった時間を記録して、作業時間を把握することを「タイムログ」といいます。
まずは日々の業務にどれだけの時間がかかっているか、ストップウォッチを使って計測してみましょう。その結果を基に、各タスクに必要な時間を明確にし、タスクを整理して計画的に進めます。
作業時間・優先順位づけを考え直す
作業時間や優先順位を分かりやすくするために、1つの業務を小分けに切り出してみてください。例えば、「資料を20部用意して、13時の会議に出席する」というタスクは、「資料を20部準備する」「13時の会議に出席する」という2つのタスクに分けられます。
そして、それらをいつまでにやればよいのかなどを参考にして優先順位を決め、タスク管理をしていきます。タスク漏れを防ぐには、1つのなかでタスクを整理整頓するだけの時間を設けるのもおすすめです。
都度計画の立て直しや段取りの見直しをする
スケジュールを組んでいても、計画通りに物事が進んでいくとは限りません。そのため、計画通りに進んでいないと分かったら、都度計画の立て直しや段取りに問題がないか見直してみてください。
また、計画通りに進んでおらずパニックにならないようにするには、事前に計画通りにいかなかった場合の対策を考えておくのも重要です。対策は1人でやらずに、周りに協力を求めるのもよいでしょう。
自分の特性を理解できるWAIS検査
仕事が遅いことに悩んでいる人は、まずは自分の特性を理解する機会を設けるのがおすすめです。ADHDの特性を理解できる「WAIS(ウェイス)検査」について解説します。
WAIS検査とは
WAIS検査は、成人の知的能力を多角的に理解するために実施する検査です。この検査は70年以上の歴史があり、今も世界各国で利用されています。また、成人用の検査だけでなく、幼児用や児童用の検査もあります。
この検査によって発達障害を特定するわけではありませんが、得意・不得意を理解するために有効な手段であるため、ADHDのある人が自身の特性を把握する自己理解に活用できるでしょう。
WAIS検査の内容
WAIS検査は、10種類の基本下位検査と5種類の補助下位検査で構成されています。
検査により、言語理解指標(VCI)・知覚推理指標(PRI)・ワーキングメモリー指標(WMI)・処理速度指標(PSI)から成る5つの合成得点が分かります。また、総合的な知的能力のほか、言語能力・抽象的思考力・記憶能力・処理速度などの観点から、知的能力を多角的に理解できるでしょう。
検査の結果は、発達障害や学習障害の評価ツールとして教育分野や臨床心理学において役立てられます。その他にも仕事に必要な認知能力やスキルセットを理解するためにも利用できるため、キャリアパスの最適化にも活用が可能です。
自分に合ったはたらき方と職業選びのポイント
ADHDの特性は、仕事に活かせる場面も多くあります。それらを理解して、自分に合ったはたらき方や職業を探してみてください。
ADHDのある人に向いている仕事
ADHDのある人は、興味のあることをとことん追求できるため、専門的な知識や技術が必要な仕事で能力を発揮できます。また、想像力が豊かで周りが思い付かないようなアイデアをひらめくのも得意なので、その特性が活かせる職業に就くのがおすすめです。
なお、これらの特性を活かせる仕事の一例として、Webデザイナーやエンジニアなどクリエーティブな仕事が挙げられます。また、コミュニケーション能力や決断力にも長けている場合は、営業職や販売職に向いている場合もあるでしょう。
「Will Can Must=やりたい・できる・すべき」の3条件を重視する
自分に向いている仕事を探すためには、自己分析をしてみるのもひとつです。「Will・Can・Must」のフレームワークをもとに「やりたいこと」「できること」「すべきこと」を書き出し、全ての条件に共通するものがあれば、それらが実現する仕事を探してみてください。
また、現在の仕事が向いているか悩んでいる場合は、今の仕事がこの3条件に当てはまるか考えてみましょう。該当している場合は、諦めずに続けていくことでキャリアパスとなる可能性があります。
ADHDのある人を支援するサービス・機関
ADHDのある人が自分に合った仕事を探す際には、ADHDのある人を支援するサービスや機関を利用してみるのもおすすめです。
発達障害者支援センター
「発達障害者支援センター」とは、ADHDのある人やその家族に対して総合的に支援を提供し、日常をサポートする地域の拠点です。都道府県や指定都市が運営しているものと、都道府県知事指定の社会福祉法人や特定非営利活動法人などが運営しているものがあります。
ハローワークや障害者就労センターと連携した就労サポートも受けられるため、ADHDの特性を活かした仕事を探したい場合は、一度相談してみるとよいでしょう。利用する際は、まず近くの施設に連絡し、予約を取ってください。
就労移行支援
「就労移行支援」は、障害者総合支援法に基づく就労支援サービスです。職業紹介をするサービスではありませんが、ハローワークなどと連携をとり、ADHDをはじめとした障害のある人の就労をサポートします。また、就労に向けたトレーニングを受けたり、職場見学に行ったりすることも可能です。
問い合わせをしてから相談に行けば、必要なサポートやサービスの説明が受けられます。
それぞれに適したはたらき方をサポートする就労移行支援事業所「Neuro Dive」
ADHDのある人は、仕事が遅いことに悩んでいるかもしれません。しかし、特性を理解し必要な対策をすれば、課題をクリアできるでしょう。また、特性を強みにできる仕事を選べば、活躍の場が広がる可能性もあります。
「Neuro Dive(ニューロダイブ)」は、発達障害(ASD、ADHDなど)のある人を対象に、先端IT分野の専門家を目指すための就労移行支援事業所です。AIを使ったデータ分析やRPAなどの高度な専門スキルが学べるため、発達障害の特性を「強み」として活かすスキルが身につきます。
就職活動や就職後の定着サポートもしているため、適職探しをしたい人にもおすすめです。まずは、説明会に参加してみてください。