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2026.10.05

コラム

 

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)とは?大人の場合の特性や仕事の困りごと

パソコンを見ながら悩む広汎性発達障害のある大人のイメージ

「人間関係がうまくいかない」「狭い分野への興味関心やこだわりが強い」「子どもの頃から周囲と違和感があった」

こうした悩みを抱え、大人になってから「自分は発達障害なのでは?」と気付く方が増えています。中でも対人関係やコミュニケーションに困難が多い場合、「広汎性発達障害(PDD、現ASD)」を疑う方もいるでしょう。

「大人の広汎性発達障害」のある方は、仕事で困りごとが生じやすいため、特性を整理して対処することが大切です。本記事では、広汎性発達障害の概要や大人に見られる特性、仕事で抱えがちな困りごとや対処法について詳しく解説します。

目次

1. 広汎性発達障害(PDD)とは

「広汎性発達障害(PDD:Pervasive Developmental Disorders)」とは、コミュニケーションや対人関係、興味・関心の偏りなどの特性が見られる障害です。以前は発達障害の一種として、「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」などと並び、それぞれ異なる診断名が用いられていました。

しかし、現在は診断基準の見直しにより、これらが統合されて「ASD(Autism Spectrum Disorder:自閉スペクトラム症)」と呼ばれるようになっています。

広汎性発達障害の診断名が現在でも使われる理由

ASDという診断名が一般的になった現在でも、「広汎性発達障害」という名称が使われる場面があります。診断名が変更される以前に広汎性発達障害と診断された方が多く存在することや、医療機関・自治体・企業の資料などで広汎性発達障害の名称が引き続き使用されていることが理由です。

この記事では、以前の名称で情報を調べている方に向けて「広汎性発達障害」の名称とASDを併記しながら説明します。

広汎性発達障害のある大人によく見られる特性・特徴チェック

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある大人には、次のような特徴が見られることが多いと考えられています。

  • 相手と距離感をはかれない
  • 相手の感情やその場の空気を読めない
  • 曖昧な表現を理解できない
  • 柔軟に対応することが難しい
  • 特定のやり方や習慣にこだわる
  • 興味関心が極端に偏っている
  • 感覚に敏感または鈍感である

ただし、上記に当てはまるからといって必ずしも広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)とは限らないため、次のような医療機関で診断を受けることが重要です。

  • 精神科
  • 心療内科
  • 発達障害外来

発達障害の診断は、現在の困りごとや幼少期の様子などを確認し、必要に応じて心理検査なども行って総合的に判断されます。

大人になって広汎性発達障害に気付く方が多い理由

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)は「生まれつきの発達特性」であるため、子ども時代から何らかの特性が見られるケースが多いです。しかし近年では、大人になってから初めて「自分が広汎性発達障害であること」に気付くケースが増えています。

もちろん個人差はありますが、子どものときは家庭や学校で自然にサポートが受けられたり、個性や性格として受け止められたりして、困りごとが表面化しにくいケースも少なくありません。一方、大人になるとその場の空気や相手の意図を読むことや、複数のタスクを並行して進めるなど、求められる社会性が複雑化します。

その結果、これまで目立たなかった特性が「困りごと」として現れやすくなり、自分が広汎性発達障害であることに気付く機会が増えます。

2. 大人の広汎性発達障害のある方に見られる特性

大人の広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある方に見られる特性として、次のものが挙げられます。

ただし、大人の広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の特性は個人差が大きいため、ここで紹介する特性がすべての方に当てはまるわけではありません。

コミュニケーションの課題

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある方は、相手の表情や声のトーン、その場の雰囲気などから意図を読み取ることが難しく、「空気が読めない」と言われてしまうケースがあります。

また、雑談が苦手な傾向があり、何気ない会話や世間話では話題選びや反応の仕方に悩んだり、一方的に自分の興味のある話を続けてしまったりすることがあります。その結果、「付き合いが悪い」「話しづらい」などと誤解されてしまい、人間関係に悩みやすいのです。

行動や思考の偏り

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある方は、行動や考え方に偏りが生じやすい傾向があります。代表的な例が、特定の手順・ルーティンで物事を進めることを好むなどの「強いこだわり」です。また、イレギュラーが苦手で、急な予定変更や例外的な状況が苦手な方も多いです。こうした特性は、正確性や品質が求められる場面では強みになる一方で、柔軟な対応が求められる状況下では強いストレスを感じやすくなります。

感覚特性

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある方には、感覚の敏感さや鈍さといった「感覚特性」が見られることもあります。例えば、騒音や日光・蛍光灯の光、香水や柔軟剤の匂いなど、周囲の刺激を強く感じる「感覚過敏」がある方にとって、集中力の低下や疲労の蓄積などの原因になります。

ほかの人が気にならない刺激でも、広汎性発達障害のある方には大きなストレス要因になりやすいのです。一方で暑さや寒さ、空腹や痛みなど体調の変化に気付きにくい「感覚鈍麻」が見られるケースもあります。

3. 大人の広汎性発達障害のある方が仕事で抱えやすい困りごと

仕事上の困りごとについて考える大人のイメージ

大人の広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある方は、特性によって仕事上で次のような困りごとが生じやすいです。

その結果、職場でパフォーマンスを十分に発揮できず、短期間で転職を繰り返してしまうケースがあります。

曖昧な指示を理解しづらい

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある方は、職場での曖昧な指示を理解することが難しいです。例えば、「できるだけ早めに対応して」「良い感じにまとめておいて」と指示されても、「何を」「どのように」「いつまでに」やるべきかが具体的に分からないため、混乱したり作業が止まったりしてしまいます。

また、発言の背景にある意図を推測することが難しいため、指示をそのまま受け取り、成果物の内容が期待されていたものと異なってしまうケースもあります。

イレギュラーへの対応が難しい

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある方は、予定外の出来事への対応を苦手としやすいことも特徴です。例えば、急な担当業務の変更やプロジェクトの仕様変更、トラブル対応などが発生すると、それまでの前提が崩れるため、何から手を付ければ良いか分からず混乱してしまいます。また、これまでの前例やマニュアルとは異なる例外的な対応を求められる場面では、不安やストレスを感じやすいです。

外部の刺激で疲労を感じやすい

一般的なオフィスでは、周囲の話し声や電話の着信音、コピー機の動作音や蛍光灯の明るさなど、さまざまな外部からの刺激があります。広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の感覚特性がある場合は、こうした刺激を処理するためにエネルギーを消耗し、強い疲労感が生じやすいです。その結果、オフィス環境そのものがストレス要因となるため、仕事に集中できなくなるケースがあります。

人間関係の課題で孤立してしまう

仕事では業務スキルだけでなく、同僚や上司とのコミュニケーションも重要となります。しかし、広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のコミュニケーション特性により、雑談のやり方や暗黙のルールに戸惑ってしまうことがあります。

例えば、悪気なく率直に発言したことが相手の気分を害することで、人間関係に摩擦が生じてしまうなどです。周囲に馴染めないことから「協調性がない」と誤解されてしまい、職場で孤立感を深めてしまうケースもあるでしょう。

二次障害を発症することもある

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)への理解が得られない環境ではたらき続けると、強いストレスの蓄積で「二次障害」を発症することがあります。二次障害とは、発達障害のある方がうつ病・適応障害・不安障害などの精神疾患を発症することです。失敗を繰り返すことが増えると、自己肯定感やはたらく意欲の低下につながり、二次障害を発症しやすくなってしまいます。

人間関係のすれ違いやコミュニケーションの悩みについて詳しく知りたい方はこちら

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マルチタスクや優先付けが難しい

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある方の中には、複数の業務を同時に進めることや、仕事の優先順位を判断することが難しいケースもあります。例えば、電話対応をしながら資料を作成したり、複数の案件を並行して管理したりする業務では、注意力が散漫になってミスが増えてしまいます。

また、「どの仕事から着手すべきか」を判断できず、締め切りが近い業務より目の前の作業を優先してしまうこともあるでしょう。急な対応が頻繁に発生する職場では、予定どおりに仕事を進められないことがストレスとなりやすいです。

4. 大人の広汎性発達障害のある方が安定就労するためのポイント

仕事の整理や自己理解のためにメモを取る様子のイメージ

大人の広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある方の中には、仕事が長続きせず、転職を繰り返してしまう方もいます。しかし、本人の能力不足ではなく、障害特性と仕事内容・職場環境が合っていないことが原因というケースが多いです。次のようなポイントを意識することで、広汎性発達障害のある方が安定就労できる可能性が高まるでしょう。

自己理解を深めて特性を理解する

仕事の困りごとや悩みの軽減には「対策」が必要ですが、まずは次のような点から自己理解を深めることが大切です。

  • どのような業務が得意なのか
  • どのような場面で困りやすいのか
  • どのような環境なら能力を発揮しやすいのか

これにより、自分に合った仕事やはたらき方が見えてくるでしょう。また、家族・支援者・医療機関など第三者から意見をもらうことで、強みや課題を客観的に把握しやすくなります。

苦手な部分を環境調整やツール活用で補う

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の特性による困りごとは、次のような自己対処で軽減できる部分もあります。

  • 口頭で伝えられた内容はメモを取る
  • 複雑なタスクは細かく分解する
  • 管理ツールで業務の抜け漏れを防ぐ
  • スケジュール管理ツールで納期を管理する
  • ノイズキャンセリングヘッドホンやイヤーマフでストレスを軽減する

苦手な部分を無理に克服するのではなく、ツール活用で補うという考え方が重要です。また、近年ではAIが発展しているため、職場で認められている範囲で、要約や書類作成などでAIを活用するのも効果的です。

職場で合理的配慮を申し入れる

「合理的配慮」とは、障害や疾患のある方が職場でパフォーマンスを発揮できるようにするための対処を指し、障害者手帳の有無や雇用枠に関わらず企業に義務付けられています。広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある方は、次のような配慮を受けることで、仕事の困りごとを軽減できる可能性があります。

  • 口頭だけでなくチャットやメールでも指示を共有してもらう
  • 業務手順をマニュアル化してもらう
  • 優先順位や締め切りを明確に伝えてもらう
  • 急な業務変更がある場合は事前に共有してもらう
  • 電話対応や来客対応など、対人負担の大きい業務を調整してもらう
  • 静かな場所やパーテーションのある席を割り当ててもらう
  • 分からないことを質問できる相談相手を決めてもらう

ただし、合理的配慮はあくまで「自己対処で対処しきれない部分」のサポートを求めるものなので、自己対処と配慮事項のバランスが重要です。

広汎性発達障害の強みを活かせる仕事を選ぶ

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある方は、苦手なことがある一方で、特性を活かせる仕事では高いパフォーマンスを発揮できることがあります。広汎性発達障害の特性には個人差が大きいですが、一例として次のような特性が挙げられます。

  • ひとつの物事に深く集中できる
  • 細かな違いに気付きやすい
  • ルールや手順を正確に守れる
  • 論理的に物事を分析できる

こうした特性は、ITエンジニア・プログラマ・データ分析職・AI関連業務など、正確性や専門性が求められる仕事で活かしやすい傾向があります。実際に、Neuro DiveではITエンジニアやデータ分析職などへの就職実績があります。どのような職種への就職事例があるのか知りたい方は、就職実績もあわせてご覧ください。>> Neuro Diveの就職実績を見る

5. 大人の広汎性発達障害のある方が利用できる支援制度

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の特性により、就職や転職に不安がある場合は、次のような就労支援サービスを活用することも有効です。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害のある方やその家族を対象に、総合的な相談支援を行う専門機関です。次のような相談に対応しており、必要に応じて医療機関や福祉サービス、就労支援機関などを紹介してもらえます。

  • 自分の特性について相談したい
  • どのような支援が受けられるのか知りたい
  • はたらき方についてアドバイスがほしい

広汎性発達障害に関する悩みがあるものの「何から始めれば良いか分からない」という方にとって、最初の相談窓口として利用しやすいでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)は、障害のある方が仕事と生活を両立できるよう支援する機関です。就職活動に関する相談だけでなく、生活リズム・健康管理・金銭管理など、就労を支える生活面についても相談可能です。また、就職後の定着支援も重視しているため、「職場で困っていることがある」「仕事を続けることに不安がある」といった場合の相談先にも向いています。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、一般企業への就職を目指す障害のある方を対象に、職業準備性を整えて就職に必要な知識・スキルの習得を支援する障害福祉サービスです。利用期間は原則2年間で、ビジネスマナー・コミュニケーション・パソコンスキルなどを学びながら、自分に合った仕事やはたらき方を探すことができます。
また、自己理解を深めるためのプログラムや職業訓練、履歴書・職務経歴書の作成支援や面接対策など、就労準備から就職活動、就職後の定着支援まで一貫したサポートが受けられます。

6. 大人の広汎性発達障害のある方のよくある質問

広汎性発達障害に関するよくある質問のイメージ

大人の広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)のある方が疑問に感じることの多い「よくある質問」をまとめました。

診断を受けなくても支援は利用できますか?

利用する支援制度によって異なりますが、就労移行支援などの障害福祉サービスを利用するには、医師の診断や意見書、自治体が発行する「障害福祉サービス受給者証」などが必要です。ASD(自閉スペクトラム症)の特性との向き合い方や、今後の生活・就労について考えるためにも、気になる場合は医療機関へ相談してみてください。

精神障害者保健福祉手帳は取得すべきですか?

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)は精神障害者保健福祉手帳の対象となりますが、取得すべきかどうかは、一人ひとりの状況や希望のはたらき方などによって異なります。精神障害者保健福祉手帳を取得することで、障害者雇用枠での就労や税制上の特例措置、公共料金の割引制度などを利用できます。医師や支援機関へ相談しながら、キャリアプランも含めて検討してみてください。

7. 大人の広汎性発達障害の特性を理解して自分に合ったはたらき方を見つけよう

IT分野ではたらく広汎性発達障害のある方のイメージ

広汎性発達障害は、現在ではASD(自閉スペクトラム症)と呼ばれており、大人になってから自身の特性に気付く方も多いです。もし「自分は広汎性発達障害ではないか?」と心当たりがある場合は、まず専門機関の診断を受けてみてください。

広汎性発達障害のある方が安定してはたらくためには、「苦手なことの克服」ではなく、自分に合ったはたらき方や環境を選ぶことが重要です。また、職場で合理的配慮を受けたり、支援制度を活用したりすることで、仕事の負担を軽減して「強み」を発揮しやすくなるでしょう。

IT分野での就労を目指すなら「Neuro Dive」も選択肢のひとつ

広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の特性にはさまざまなものがありますが、IT分野との相性が良いケースがあります。IT分野での就職やキャリア形成を目指す方は、Neuro Diveも選択肢のひとつです。

Neuro Diveは、AI・機械学習・データサイエンス・RPAなどのITスキルを習得しながら、就職活動から就職後の定着支援まで受けられる、IT特化型の就労移行支援事業所です。無料説明会や見学もご利用いただけますので、広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の特性や仕事でお悩みの方は、この機会にぜひご相談ください。

この記事の監修者

パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネージャー
戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)

上智大学卒業後、損害保険会社で法人・官公庁営業を経て、2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。

【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員