
ADHD(注意欠如多動症)は、「不注意」「多動性」「衝動性」といった特性を持つ発達障害です。大人になると社会的な責任が増え、複雑なタスクやコミュニケーションが要求される場面が増えるため、ADHDによる実行機能の課題が顕在化しやすくなります。例えば、「仕事でミスが多い」「やるべきことに手が付かない」「人間関係がうまくいかない」などの困りごとです。
一方で、適切な理解や就労支援・合理的配慮によって、ADHDの障害特性と付き合いながらはたらくことができます。本記事では、ADHDの基礎知識や仕事における困りごと、就労支援の活用法などについて解説します。
目次
発達障害の一つ「ADHD(注意欠如多動症)」とは
ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:注意欠如多動症)は、「不注意」「多動性」「衝動性」といった特性がある発達障害です。発達障害の特性は幼少期から見られることが一般的ですが、大人になってから困りごとが顕在化してADHDと診断されるケースもあります。
ADHDの定義と主な症状
不注意
不注意はADHDの代表的な特性で、大人では特に社会生活で課題になりやすい傾向があります。
- ケアレスミスが多い
- 頻繁に物を失くす
- タスクの抜け漏れが多い
- 長時間の集中が難しい
これらの特性は、仕事で「メールの返信漏れ」や「納期管理のミス」などの形で発生しやすく、評価に直結してしまうケースも多いです。
多動性
子どもの場合は「じっとしていられない」といった形で現れる多動性ですが、大人になると外見上は目立たなくなる傾向があります。しかし、内面的には「常に何かしないと不安」という焦燥感があり、タスクを増やしすぎて手が付けられなくなるなどの課題が生じやすいです。
衝動性
衝動性は、思い付いたことを即座に行動に移してしまう特性を指し、次のようなものが該当します。
- 会話中に相手の話を遮る
- 衝動的に発言してしまう
- 計画性のない買い物や行動を取る
このような衝動性は、対人関係におけるトラブルや社会的ストレスの原因となります。なお、ADHDの不注意・多動性・衝動性といった特性は、複数を併発している方も多いです。
ADHDは「実行機能」の障害
- 目標設定と計画立案
- 優先順位の判断
- 作業の切り替え
- 感情や行動の抑制
こうした実行機能がうまく機能しないことで、「衝動的な言動をしてしまう」「締め切り直前まで手を付けられない」など、ADHDの代表的な症状が生じると考えられています。そのため、ADHDのある方は「できないことを克服する」のではなく、「環境調整やツール活用で実行機能を補う」という視点が重要です。
発達障害・ADHDの診断方法と受診の流れ

不注意・多動性・衝動性といった特性は、誰にでも一定程度は見られるため、「当てはまる気がする」という感覚だけでADHDと判断することはできません。ここでは、具体的な診断の流れや、課題を感じたときの相談先について見ていきましょう。
医療機関での診断プロセス
セルフチェックの注意点
近年では、インターネット上で簡易的なセルフチェックが公開されていますが、あくまで「傾向の把握」に過ぎません。体調や思い込みなどで過大評価・過小評価など、バイアス(偏り)が生じやすいからです。セルフチェックはあくまで参考程度にとどめ、医師の適切な診断を受けましょう。もし「専門家の診断を受ける前に自分で確認したい」という場合は、次のセルフチェックを試してみてください。
相談すべき機関・サービス
発達障害・ADHDによる生活や仕事での困りごと

大人になると、仕事・対人関係・金銭管理などの責任が増すため、不注意・多動性・衝動性といったADHDの特性が顕在化しやすくなります。その結果「頑張っているのに成果が出ない」と感じ、自己嫌悪やストレスにつながることも多いです。ADHDのある方が抱えがちな、生活や仕事での困りごとについて見ていきましょう。
仕事・対人関係における困りごとの代表例
大人のADHDは、特性そのものは子どもと共通していますが、現れ方は異なります。なかでも課題になりやすいのは、仕事と対人関係です。
| 仕事上の困りごと | 単純なミスを繰り返す タスクの抜け漏れが起きる スケジュール管理が難しい |
| 対人関係上の困りごと | 相手の話をさえぎって話す 思ったことをそのまま発言する 感情のコントロールが難しい |
能力自体は高くても、不注意・多動性・衝動性といったADHDの特性により、成果が安定せず仕事での評価が得づらいケースが多いです。また、本人に悪意がなくても対人関係に摩擦を生じやすく、評価の低下や孤立につながってしまうこともあります。
二次障害(うつ・不安障害など)を発症することもある
発達障害・ADHDでは「二次障害」のリスクも大きな課題です。二次障害とは、ADHDの特性による精神的ストレスや疲労の蓄積により生じる、次のような精神疾患を指します。
- うつ病
- 不安障害
- 適応障害
例えば、不注意によるミスを繰り返し叱責されることが多い環境では、「自分は何をやってもダメだ」という意識から抑うつ状態が生じるなどが一例です。
発達障害・ADHDと付き合いながらはたらくために

ADHDの特性は、仕事・人間関係・メンタルヘルスなど広範囲に影響を及ぼすため、適切な理解や合理的配慮が得られる環境が不可欠です。次のポイントを意識することで、ADHDの特性を補いながらはたらきやすくなります。
セルフマネジメントを意識する
次のような取り組みを行うことで、ADHDの障害特性をある程度はコントロールできるようになります。
| タスク管理の外部化 | ToDoリストやカレンダーアプリの活用 リマインダー設定による抜け漏れ防止 「5分でできる業務」などタスクの細分化 |
| 環境調整 | デスク整理などで視界に入るノイズを減らす スマホの通知を切るなど誘惑を排除する 集中しやすい時間帯に重要タスクを配置する |
| 行動のルール化 | 「〇時になったら開始する」とトリガーを決める 発言前に心の中で3秒数えて深呼吸する 短いスパンごとに小さな報酬を設定する |
「小さな報酬」として、間食・動画・音楽など五感を癒す報酬が効果的です。これによりタスクへのモチベーションを高め、ADHDのある方に生じがちな「先延ばし」を緩和できます。詳細は次の記事もご参考ください。
向いている仕事・苦手な仕事を理解する
「単調で反復的な作業」や「長時間の集中を要する業務」などは、ADHDのある方にとって負荷が大きいです。一方で、次のような特徴のある仕事は、ADHDのある方に向いていると考えられます。
- 変化があって刺激が多い環境
- 短期的な成果が見えやすい業務
- 自分のペースで進められる仕事
ITエンジニアの一部領域やクリエイティブ職、興味のある分野の営業職などが具体例です。特に次のような点から、IT分野はADHDの特性との相性が良いと考えられています。
| 「過集中」がパフォーマンスにつながる | プログラミングやデバッグなどの業務は、一気に集中することで成果が出やすい |
| 成果物ベースの評価が主流 | 作業プロセスにばらつきがあっても、成果が出せれば評価されやすい |
| タスクを細かく分解しやすい | タスクが明確に区分されており、チェックリストやタスク管理ツールで管理しやすい |
ただし、発達障害・ADHDの特性は個人差が大きいため、専門家の支援を得ながら適職を探すことが重要です。
必要な合理的配慮を言語化する
ADHDの特性をうまくコントロールしてはたらくために、職場で適切な合理的配慮を受けることが重要です。合理的配慮とは、障害のある人が業務を遂行できるようにするために、業務や環境などを調整することを指し、主に次のようなものが挙げられます。
- 業務連絡はテキストベースで行う
- タスクの優先順位を明確化する
- 納期を細分化して設定する
- 静かで集中しやすい作業環境の確保
- 業務量の調整や役割分担の最適化
いずれも実行機能の負荷を軽減し、ADHDの特性をカバーするためのものです。ただし、必要な配慮事項には個人差があるため、医療機関や就労支援機関などで専門家のアドバイスを得ながら、特性に合った支援内容を言語化しましょう。
配慮事項を申し入れる際の具体例
配慮事項を申し入れる際は、次のようにまとめると良いでしょう。
| ADHDの特性により業務遂行に支障があるため、下記の配慮をご相談させてください。 業務調整:毎週月曜に優先タスクを共有し、納期は中間期限を含めて設定してください。 連絡方法:重要連絡はメールまたはチャットにて、期日と優先度を明記してください。 会議対応:資料を事前配布したうえで、発言順を設定いただけると助かります。 |
発達障害・ADHDのある方がはたらくために活用できる支援サービス
ADHDのある方は、セルフマネジメントや合理的配慮で特性をコントロールしながらはたらくことが可能です。しかし、「過去に就労がうまくいかなかった」「スキルに自信がない」など、さまざまな理由で就労のハードルが高いケースがあります。その場合「就労移行支援」を活用することで、就労準備を無理なく整えて、安心して転職・就職活動に臨みやすくなります。
就労移行支援とは
就労移行支援は、障害のある方が一般企業への就職を目指すための支援サービスです。次のような職業スキルの習得から就職活動、職場定着などの包括的なサポートを、原則として最長2年間利用できます。
- ビジネスマナーやコミュニケーション訓練
- PCスキルや専門スキルの習得
- 履歴書作成・面接対策
- 就職後のフォローアップ・定着支援
また、ADHDのある方が就労準備を整える場合は、上記のサポートに加えて、特性を活かせる仕事に就くためのスキル習得や、実行機能を補えるような働き方への理解も必要となってきます。
Neuro Dive(ニューロダイブ)の特徴
- データサイエンス
- AI・機械学習
- プログラミング
- RPA(業務自動化)
これらの分野を中心に、実務に近いカリキュラムが提供されています。さらに、ADHDを含む発達障害の特性を前提とした支援設計により、タスク・スケジュール管理の方法など実務で役立つ知識が学べます。「専門スキルを身に付けたい」「発達障害・ADHDの特性を活かしたい」という方にとって、Neuro Diveは新たなキャリア形成の選択肢となるでしょう。
発達障害・ADHDのある方の就労支援は「Neuro Dive」へ!

発達障害・ADHDのある方は、環境への適合性がはたらきやすさに影響しやすいです。合わない環境で無理してはたらき続けると、精神的なストレスが蓄積して二次障害につながることもあります。ADHDの障害特性を活かしやすい仕事や、適切な理解・配慮が得られる職場を選ぶことで、長期就労を目指せるようになるでしょう。
先端ITに特化した就労移行支援事業所「Neuro Dive(ニューロダイブ)」では、発達障害・ADHDの特性をIT業界で活かすためのサポートが受けられます。ITの基礎から無理なく学べるので、IT経験のない方でも安心して専門スキルを習得可能です。無料体験もできますので、就労や働き方への不安がある方は、この機会にぜひご相談ください。
上智大学卒業後、損害保険会社で法人・官公庁営業を経て、2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント、障害者職業生活相談員